前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



「梨が良かったよね。僕も梨の方が好きだし」


そっちじゃねえよ!

大雅は兄の電波な性格に苛立ち、歩み寄って拳骨をかます。

「アイッター!」なにするのさ! 声音を張る楓に、「馬鹿か!」今時の小学生だってカッターナイフでりんごを剥こうとは思わねぇぞ! と大雅。


すると楓は馬鹿は大雅じゃないかと脹れ面を作った。


「カッターナイフが紙や鉛筆を削るために生まれてきたとでも思っているのかい?
そんなの人間の価値観によって定められた認識に過ぎない。
カッターナイフでりんごを剥く人間だって世の中、探したらいるものじゃないかな。

つまりナニが言いたいかっていうと決め付けは駄目ってお兄ちゃんは言いたいんだよ。

カッターナイフは紙を切るために生まれてきたんじゃない。切るために生まれてきた物なんだ!」


認識の範囲でりんごが剥けないというのなら、今此処でカッターナイフを使い、りんごを剥いて見せようぞ!

それによりカッターナイフは一段、進化するだろう!
 
きっぱり言い切った楓の主張に大雅はもうヤダと遠目を作り、鈴理はぽかーんと呆ける他にない。
 

「楓さん。相変わらずだな」

「……マジ、ハタチ過ぎている男がナニ言ってやがるっ。
時々兄貴の電波についていけなさ過ぎてリアクションに困るんだよな。ははっ、泣きてぇ。俺、弟やめてぇ」


落ち込む大雅を余所に楓が真面目にりんごをカッターナイフで剥こうとしたため、我に返った弟が全力で死守。

カゴに詰まっていたりんごは丸かじりするということで落ち着き、三人で大きな果実をがじがじと齧り付くことになった。


仲良くソファーに腰掛け、がじがじ。

三人でがじがじがじ。
 

楓は剥いた方が絶対に食べやすかったのに。丸かじりだと歯茎から血が出ることがあってヤなのに、等などとカッターナイフを奪われたことに対して恨み節を唱えていたが、カッターナイフで剥いたりんごを食べるくらいだったら丸かじりの方がマシだと大雅や鈴理は思ってならない。