「食らうぞ!」吠える鈴理に、「やってみろ!」返り討ちにして食ってやらぁ! と大雅。
両者肉食という名の攻め魂に火を点けて睨み合う。
やや鈴理の方が威圧的で優勢のように思えるが大雅もまた何様俺様肉食様と自負しているため、ここで負けるわけにはいかない。
受け男など論外なのだ。
男は女を食う。女は男に食われる。
そういった持論を持っているがゆえに、ええい、食われて堪るかドチクショウ。
おんどりゃ食っちまうぞと相手を威嚇しておく。
性格的に負けていたとしても、だ。
受け男にはなれない!
自分は攻める生き物なのである!
……ただ宇津木ワールドの中のような攻め男を妄想されてしまうと幾分切ないものを感じるのも否めないが。
あたし様vs俺様。
この勝負はどちらに軍配が挙がるのか。結果を出す前に引き分けとなってしまったのはこの直後。
「あんれ?」お邪魔だったかな、と第三者の声が勝負をノーカンにさせたのだ。
能天気な声音に睨み合っていた二人は一変して瞠目、出入り口に目を向ける。
するとそこにはカゴを持った青年、大雅の兄・楓がひらひらっと手を振っていた。
「ノックくらいしろって兄貴」
ゲンナリ顔で注意する大雅に、「ごめーん」悪びれた様子もなく楓が片手を出した。
次いで、持っていたカゴを両手で持つと二人にそれを見せて目を輝かせる。
「鈴理ちゃんが遊びに来ていることだし、お兄ちゃん、張り切ってりんごを買ってきたんだ。三人で食べよう」
「……、あ?」
「だーかーら。りんごを買ってきたんだって大雅。鈴理ちゃんが来るなんて久しいじゃないか。今じゃ大雅の婚約者で、将来は僕の義妹になるかもだからね。ここはおもてなしを! と思ってさ。
うーんっと、りんごを剥いてあげるからちょっと待っててね。
確かカゴに入れてきたんだけどっ…、あ、あったあった」
さあ、剥いてあげる。
片手に熟れたりんご、片手にカッターナイフを持って満面の笑顔を浮かべる楓に大雅は深い溜息をつき、鈴理は目を点にした。
「兄貴…てめっ、馬鹿だろ?」大雅のツッコミに、「あ。やっぱり?」と楓は苦笑した。だってしょうがないじゃないか。
これしかなかったんだもの、楓は肩を竦めてりんごに目を向けた。



