あの頑固ジジイ共が簡単に許可を出すわけも無い。


現に自分達の申し出になんの冗談だと一蹴する始末。

自分達が主張に見合うような仕事をこなすと言っても相手にしてくれない。

相手にしてもらわないと、証明するものも証明できないのだから困ったものである。


「お前んところはなんて?」


大雅は鈴理に視線を流した。
 
ちなみに自分は親父がカンカンだと肩を竦める。
 
似たようなものだと鈴理は冷然と伝え、決断を下してくれるまで口もきかないつもりなのだと勝気を見せた。
 

「そこまでするか?」呆れる大雅に、「当たり前だ」本来ならば激怒も激怒して家を出て行くレベルだと鈴理は舌を鳴らす。


「思えば、父さまと母さまが勝手に話を押し進め、ついには独断で空に別れるよう強制した。良き友人でいて欲しいなどと言うが、それは偽善だ。

結局は別れろと脅しているのも一緒。
式に呼んだり、こっそり会ったりッ……、思い出しただけで腹が立ってきた」


「ま、その点に関しちゃ豊福も鈴理も気の毒だと思うけどよ。
そういやよ、豊福の借金はどーするんだ? これは俺達じゃどうにもなんねぇよ。蒸発した人間を捜すってのも骨が折れるぞ」


仮に婚約が破談されたとしても、向こうの婚約は破談されない。

向こうには借金という分厚い媒体があるのだ。

それを無くすことは自分達が肩代わりでもしない限り無理だと思う。


先ほども述べたとおり、借金を押し付けた人間の行方を捜すのは至難の業である。

 
五百万という大金は自分達の小遣いや貯金でようやく足りるかどうかだろう。
 
 
しかし集まった金を豊福家が受け取るかどうかは別問題だ。


なにより安易に第三者の立ち入る問題でもない。
 
それは鈴理も、挑発してきた玲も分かっている筈。

空自身もその件に関しては複雑そうな念を抱いている様子だった。


「これは御堂家と豊福家の問題だ」


俺達の入れる余地はないのでは?


大雅の問いに、鈴理が「そのことについてなんだがな」ちょっと小耳にした情報があるんだ、と眉根を寄せ、ソファーの背面に身を預けた。


「最近、空のご両親が弁護士を探しているらしい」

「弁護士を? ……てか、テメェがなんでそんな情報を」

 
まさかストーキングか? ああ、てめぇならありえる。

 
遠目を作る大雅に「いいから聞け」鈴理が眼光を鋭くして話を続ける。