使命を果たせなかったら、俺達家族はどうなってしまうのだろうか。

借金という翳(かげ)が纏わりつく。
  

(でも、もし息子じゃなくて娘ができたとしても)


俺は源二さん達のように真摯な気持ちで娘を愛したい。

御堂先輩のように悲しい思いをさせたくはない。

君は生まれてきて良かったんだよって言ってやりたい。


……俺、まだ16なのにもう将来の子供について考えないといけないなんて。

子供を作るにはまずあれな行為が必要だろ。

あれな行為は三ヶ月後に来るかもしれないだろ。


でも来ないかもしれないだろ。

もしかしたら未来が変わって。
 
 

(馬鹿だな。ナニ、期待しているんだ俺。どう足掻いたって借金は消せやしない。鈴理先輩達だって御両親が許してくれやしない。分かってるじゃないか)
 


俺は御堂家のために生き、そして死なないといけないんだから。
 
五百万の借金を背負っている俺の、唯一託された人生に苦笑を零す。

俺達家族は幸せなんだろうな。
縁があって財閥の人達に救済してもらえたんだから。


財閥に関係なく、御堂先輩の傍は居心地が良いしさ。


彼女は言った。
俺達の関係は中和、曖昧な関係だと。

でもいずれ曖昧な関係は確かな関係に確立する。


これは絶対的な未来だ。


(過去は振り返れない、か)


胸が甘く、切なく疼く。

この気持ちは甘受しておこう。
 

守りたい人を見つめ、俺は微かに頬を崩した。


起こしていた上体を布団に沈めると、その振動が眠りの妨げになったのか御堂先輩が重々しく瞼を持ち上げる。

寝ぼけているのか「ん」意味の成さない言葉を漏らし、手探りで人の体を引き寄せようとしていた。

自ずから近寄り寝ぼけている彼女の身を引き寄せる。状況が分かっていないのか、首を傾げる仕草を見せたけど、睡魔に負けてまた深い眠りに就く御堂先輩。

一笑してしまう。
寝ている時くらいは男ポジションを譲って下さいね、王子様。