「今この瞬間、君は完全に僕のもの。鈴理も借金も身分も関係ない。こうして触れ合っているのは僕と君、他者は侵すことはできない」
だからほら、感じたらいい。
何も考えず、何も思わず、何も疑わず、ただ僕を感じて。
君の求めたことをしてあげるから。
さあ、感じて。
その手で。
その肌で。
視覚で聴覚で触覚で。
「今は絶対に放してやらない。誰が邪魔してこようとも」
麗しの王子の台詞はまるで麻薬でも含まれているかのよう。
演劇部に所属しているだけあって、意図して言葉ひとつひとつで心を侵していく。
こういった台詞を紡ぐことで観客を魅了しているんだろうな、片隅で分析している冷静な俺が納得していた。
「女の子が聞いたら喜びそうっすね」
「豊福は嬉しくないか?」
ゆっくりと人の喉元を舐め上げて、御堂先輩が顔を覗き込んでくる。
「俺は一応男っすよ。どちらかといえば言いたい側っす。でも、貴方が男ポジションを望むなら俺は有りの儘の貴方を受け入れます」
どうせ俺は受け男っす。
受け入れるのが受け男の務めっすもんね。
そっと頬を崩し、「先輩」俺は相手に手を伸ばして髪を撫ぜる。
短髪になった髪をわっしゃわしゃにしてやるのが俺のお気に入りになっていた。
彼女も満更じゃないのか、頬を紅潮してはにかんでくる。
「未だに男が良かった思うけれど、君をこうして気兼ねなく攻められるなら」
女で良かったのかもしれない。
交互の耳の縁に口付け、そこをやんわりと食み、人の微かな反応を楽しむ王子は右の方が弱いねと官能的な台詞を呟いて吐息を吹きかけてくる。
「あ…、あんま人の耳で遊ばないで下さいよ」
じんわりと訪れる感覚を振り払い、彼女と視線を合わせた。
「可愛がっているだけさ」
目で笑う王子は再び右耳を食み、そのままねっとりと愛撫してくる。
俺の吐く息が熱帯びてきた。
これはやばい、そう思うのに体はより密接し距離がなくなる。
逃げ道が封鎖された。
口元を手で押えると、その手に彼女の手が重なった。



