「つ…、つけて…、下さい」
「ナニを?」
「(分かってるくせに!)き、キスマークを」
「何処に?」
「(どっ?!)……く…くび…?」
「どうやって?」
「…や、…やさしく」
たどたどしく言うと、「支離滅裂で分からないな」ちゃんと言ってくれないと、と御堂先輩が口角を持ち上げた。
い、意地悪すぎる!
俺にここまで言わせておいて分からないとかほざいたよこの人!
復唱しろって言うんっすかっ、今の言葉を!
鈴理先輩だってこんな意地悪はなかったっすよ!
そういえば大雅先輩っ、言ってたなぁ。
御堂先輩って鈴理先輩より意地悪度は高いって。まさしくそれだ畜生。
首まで赤くする俺はもう言えない白旗を振る。
ならこっちが決めるまでだと御堂先輩が細く笑った。
それは困る。
彼女に任せたら何をされるか……っ、だからって言わされるのも男としての自尊心が傷付くんだけど!
え、俺に自尊心がまだ残っていたのか?
あるよ!
男を捨てたわけじゃないもん! 受け男に男が付いているでしょーよ! 俺は今も昔も男だよ! これからおにゃのこになる可能性もあるけど!
心中で半泣きになりながら、俺は目を泳がせながらヤケクソに繰り返した。
キスマークを首に優しくつけてくださいって。
そしたらどうだい? 御堂先輩、人の目を見て言えとか言うんだぞ!
もう泣くよ、俺泣くよ!
羞恥心で号泣できる自信ができてきたよ!
人がこんなにも頑張って言っているのに!
何も言えず身を小さくしていると、「豊福の口から聞きたいんだ」戸惑い果てている俺を逃がさないよう、彼女は顎を骨張った綺麗な指で掬ってくる。
「今だけ君を僕のものにしてしまいたいんだ」
その証を体に刻みたい。
一方的じゃなく、意思疎通し合った状態で。
軽く目を見開く俺に、「ね、僕に教えて?」狡く強請ってくるプリンセスは頬を崩してくる。
ズルいと思った。
そんな強請り方をされたら断るものも断れない。
三ヶ月間の約束は何処? 俺の完敗じゃんかよ。
感じる羞恥を拭い捨て、相手の目を見つめる。
日本人とは少し違う顔立ちとその瞳。ガラス玉のような眼を見つめ、見つめ返して、俺は唇を震わせた。
「今だけ…、先輩のものにしてください。俺の首に、キスマーク…つけて」
動作だけ故意的に抜かす。
当然、御堂先輩は優しい方がいいのか、それとも激しい方がいいのか、聞いてくるだろう。
それを踏まえて答える。
相手の右頬を一撫でして「どっちもちょうだい」と。
不意を突かれたらしく、「君はズルイ男だね」そうやって人を煽ってくるんだから、プリンセスは満足げに笑みを零した。
ズルイのはお互い様だと思うんだけど。
浴衣が肩まで剥かれ、首筋に唇を寄せられる。
下から上に一舐めされる感触にくすぐったさを覚えた。
直後、俺の望みどおり、優しいキスマークと激しいキスマーク、どちらも付けられる。
最初は癒すように唇を寄せられ、次は内出血するほど強く肌を吸われ、証を残される。
赤くなっているであろう痕を指先でなぞってくる御堂先輩はご満悦に綻んだ。



