「ごちそうさま」
ようやく解放してくれた彼女は、人の上唇と下唇を舐め、最後に自分の口角を舐めて目尻を下げる。
荒呼吸を繰り返し、ただただ相手を見つめ返すしかできない俺は、やっとキスが終わったのだと理解。
全身の力を根こそぎ持っていかれてしまったせいか、言葉を発することすら儘ならない。
袂が少しだけ開かれる。
標的を首筋から鎖骨に定めたのか、柔らかな唇がそこに下りてきた。
そのまま肌に吸い付いて痕を付けられる。最初は労わるような付け方を、途中から歯を当てるような付け方をされ、俺は眉根を寄せる。
「せん、ぱい。痛いっす」
さすがに歯を当てられると痛みを覚える。
体を震わせながら相手の肩に手を置くと、片手首を取られた。
軽く手首にキスをしてくるマセた行為に戸惑ってしまう。
ゆっくりと視線を合わせてくる某王子は俺の唇を食指でなぞり、
「煽った豊福が悪いんだ」
僕の理性を試してくるようなことをしてくるから、彼女は柔和な笑顔を向けてきた。
「今すぐ欲しくなったじゃないか。豊福が悪いんだからな」
俺は申し訳無さそうに視線を下げつつ恥じらいながら、「だって」先輩が欲しかったんだもん……、とかキショイことを言う筈もなく、寧ろなんでこんなにもアダルトチックになっているんだいと雰囲気に冷汗を流していた。
これはもしかしてエッチムード、か?
いやいやいや、まだ三ヶ月も何も来てませんよ!
「だっ、駄目ですって。っ…、み、御堂せんっ」
今度は癒すように痕がついた場所を丹念に舐めてくるもんだから、堪ったもんじゃない。
本気で食われる気がしたから、今日は駄目だと相手に何度も言い聞かせる。
また歯を当てられた。痛みで体が硬直。
頃合を見計らって舐める、噛む、舐める、噛む……なんのプレイっすかこれ。SM? 飴と鞭プレイ?
「先輩」懇願にも似た声で相手を呼ぶと、先輩がニッコリと笑ってくる。
「なあ豊福。ファーストフード店で君が言ったこと憶えているかい? 好きなことに付き合うって言った、あれ」
………。
うん憶えている、だって俺が言ったことだから。
でもですね、一応カッコ書きでセックス以外でって言ったんっすよ! カッコ書きで!
俺の主張なんぞ通る筈もなく、御堂先輩は付き合えよと目尻を下げてくる。
「つまみ食いくらい許してくれるだろ?」
おどけたように笑うと、ちゅっと右耳にキスをしてきた。
こんなにも傍にいる婚約者でありながら、ちっとも手を出せない。
限界だと御堂先輩が不満を口にした。



