俺は決まりが悪くなった。
そう言われると何も言えなくなる。
鈴理先輩のことは好きと言わなく(言えなくなった)けどまだ吹っ切れた、わけ、じゃないんだよな。
御堂先輩の立場を考えると、俺ってわりと酷いことをしているのかもしれない。
優柔不断といえばそうなのかも。
はっきり言おう。
鈴理先輩は俺にとって好きな人、御堂先輩は俺にとって守りたい人、そう自分の中では区別はしている。
困る俺にふふっと笑い、「ごめん。意地悪を言ったね」困らせるつもりは無かったのだと彼女は目尻を和らげる。
「分かっているんだ。君が守ってくれようとする気持ち。それは純粋に僕という人間を慕ってだということも」
けどね豊福、僕はやっぱり君のことが好きなんだ。
何処かで思っている。
鈴理は羨ましい。
許婚のことで傷付いたのにも関わらず、豊福からまだ思われているんだからな…ってな。
と、まあまあ、乙女チック姫チックぶりっ子チックに思ってはみれど、僕自身、実力で君を落としたわけじゃない。
不戦勝を手にした気分なんだ。
令嬢だからかな、簡単に手に入らないと知れば知るほど欲しくなるんだ。
令嬢は大半のものはなんでも金で手に入るからね。
でも君って存在は金じゃ買えない。
借金があっても、それは同じ。
君の心は金じゃ動かない。
僕はそれを知っている。
だからこそ純粋な関係を欲するんだ。
借金も何も無い、純粋な関係に。
「関係は不純。でも君が僕の傍にいてくれる気持ちは純粋。これが今の僕達の関係だ。純と不純で中和されている、曖昧な関係なんだ」
君は容易には落ちてくれないんだろうね。
だから燃えるのだ、と口角を持ち上げる御堂先輩。稀に見せる女性の面持ちに俺は言葉を失った。
やっぱり御堂先輩は女性なんだな。
短髪にしようと、男装しようと、この人の醸し出す空気は女性だ。
「君も板ばさみだな。借金のせいで感情の自由が許されないのだから」
苦笑する王子は俺の頬に添えていた手を滑らせて背中に腕を回してきた。
抱擁によって距離感がなくなる。
垂らしていた腕を動かそうと思ったけど、彼女が腕ごと俺の背中を抱擁しているからそれは叶わず。
「先輩」視線を流すと、「三ヶ月の約束」あれは必ず僕が勝ってみせるから、だから三ヵ月後のその日君をちょうだい、ぜんぶをちょうだい。
婚約者は子供のように強請ってくる。



