「せめて主夫と言って下さいっすよ、御堂先輩。けれど半分当たってますかねぇ。俺、受け男だし……、あ、なんでもないっす。と

にかく俺はタイムセールに命を懸けているんっすよ。今日、戦利品を獲られれば」


「獲られれば?」


「父さん母さんが喜んでくれるっすよ! 俺、両親至上主義なんっすけど、二人が喜んでくれる顔が見たくて見たくて」


破顔すると、御堂先輩が面食らった面持ちを作ってくる。

「君は」ナニか言いたげだったけど、俺の意識は聞こえてきたベルの音に取られてしまった。


「ああぁあああ、あのベルの音はっ、タイムセールが始まったっす! ちょ、ちょぉおおお俺の狙った卵っ、豚肉っ、キャベツー! 68円のトイレットペーパー!」
  

チリンチリン―。

向こうから聞こえてくるベルを聞いた瞬間、俺は血相変えてBダッシュ。先輩達を置いて、スーパーへと走って行った。


「お、おい」待てよ豊福、大雅先輩が後から追い駆けて来るけど、構ってられない。激安商品が俺を待ってるんだから!
  

「あいつは、豊福は変な後輩だな。鈴理」


「ははっ、そうだろ。空は面白いんだ。
まあ、少しケチな面もあるが、あいつはああいうことになると一生懸命になる。あいつの前で庶民生活を侮辱したら、かんなり怒るから気を付けとけよ」


「空? あいつの下の名前は空というのか。―…豊福空、か」
   
 
鈴理先輩と御堂先輩の、聞こえるか聞こえないかの会話は、残念な事に突っ走っている俺には届かなかった。



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