前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



四万弱の稼ぎだし、家庭教師なんて雇えるかどうか。

眉を下げる俺の心配はどうやら見当違いだったらしく、淳蔵さんに笑われてしまった。

「君は自分で払う気だったのかい?」

家庭の生活も満足に賄えないのに、何を言い出すかと思いきや。

皮肉を向けられてしまうけど、そこは聞き流すよう努めた。


本当のことでもあったし。


心配しなくとも御堂家直下の家庭教師を配属してくれるらしい。

とにかく他の令嬢令息並みに知識とマナーをつけてもらいたい、それが淳蔵さんの命令だった。

一日のスケジュールも組んでくれたようで、時間配分と勉強内容が記載されたプリントを手渡された。


俺は驚愕してしまう。
殆ど勉強一色で息つく間もなかった。

これ、毎日こなすの?
え? 平日はこれを毎日?

塾の強化合宿並みに勉強が詰まっていたもんだから(塾の合宿も地獄だって聞いているからこの表現がぴったりだ)、隣で聞いていた御堂先輩があんまりなスケジュールだと非難する。


病気をしてしまうのではないか、彼女の言葉に癇癪を起したのか口答えはするなと淳蔵さんが一喝。

すかさず源二さんもこのスケジュールについて物申すけど、財閥の現状を甘く見るんじゃないと淳蔵さんは鼻を鳴らした。

今までどおりの生活を送っていると、必ずツケが回ってくる。


のらりくらりしている場合じゃないのだ。
 

元凶はそこの女が息子を産まなかったばっかりに、跡継ぎ問題でゴタつくのだとあんまりなことを吐き捨てた。

別に養子をとっても構わなかったのだと淳蔵さんは冷然と言う。

女の孫に継がせるよりかは、ずっとマシな手もあった。

けれども息子の源二さんの気持ちを考慮して、こうした手を打っている。


だからこそ婚約者には見合った教育が必要なのだと権力者。


それじゃあまるで御堂先輩が生まれてはいけなかった子供のようじゃないか。喉元まで出掛かった反論を嚥下して腹の底に沈ませておく。

今、俺がしゃしゃり出ると火に油を注ぎそうだ。