こうして長テーブルを挟んで向かい合ったわけだけど、嗚呼、空気が重たい。
なんで今日に限って淳蔵さんが……、折角フライト兄弟達と遊んで気分を爽快したのに。
これじゃプラマイゼロ、寧ろマイだ。
ドッドッドと緊張で高鳴る心臓を抑え付けていると、「何しに来たんですか」御堂先輩が噛み付くように相手を睨んだ。
「先輩」物の言い方を窘めるけど、婚約者は聞く耳を持たない。前触れもなしに我が家に来た目的を聞いている。
まるで脅すように。
何処吹く風で受け流す淳蔵さんは孫達の顔を見たかったのだと細く笑った。
これでも孫達が可愛いと思っている。
だから顔を見たかっただけだと淳蔵さん。
孫に複数形が付いているのは、俺もまたその孫に含まれているからだろう。
あんまり実感は湧かないけど、淳蔵さんにとってはそうなるのかな。
まだ正式に婚約式を挙げていないから、実感がないけどさ。
「さてと」孫達の顔を見に来たのだけれど、何故、この時間に帰宅しているんだい。
いっちゃんツッコまれたくないところを聞かれてしまい、俺の胃が悲鳴を上げた。
よりにもよって淳蔵さんからお叱りを受けるとかっ、どんな苦行だよ!
俺が返事する前に、「彼は僕と遊んでいたのです」これでも一端の高校生ですから、遊ぶ時間だって欲しいのですよ。
素っ気無く返して腕を組む御堂先輩に、「別に咎めてはいないさ」子供は遊ぶことが仕事だからね、と淳蔵さん。
けれど遊ぶだけが仕事じゃないだろう?
遠まわし遠まわしに責め立ててくる。
「財閥の婚約者に相応しい常識やマナーを彼は学べているのかどうか、非常に疑わしい。
特に豊福くんは庶民出身。
他の財閥令息と比較とその差は歴然、足元にも及ばないだろう。遊んでいる暇などないのだよ。それは分かっているね? 豊福くん」
「……申し訳ございません。反省しております」
「豊福はいつも遊んでいるわけじゃありませんよ。家にいる間、大半を勉強に費やしているのですから。息抜きだって必要です」
お前は黙っていなさい。
丁寧口調、けれど有無言わせない声音に御堂先輩が舌打ちを鳴らした。
一子さんが御堂先輩を注意するけれど、彼女は視線を畳に向けたままだ。