そういうことじゃないけど、あんま想像がつかないとイチゴくん。
「アジから聞いていた時はもっとイチャイチャのラブラブだったんだけど」
やっぱ元カノが凄まじかったのかな、素朴な感想を彼が口にしたせいで御堂先輩の中の闘争心が燃えた。めらめらっと燃えた。
「お、おいイチゴ。お前はまた余計なことを」
「だってアジが聞かせてくれるのってすっげぇじゃんか。わりと普通なんだな、今の攻め女って」
嗚呼、オーラで分かる。
僕が鈴理に負けていると言いたいのかい?
豊福、君は彼にナニを話したんだい?
と、無言のオーラが俺を責めてくるよ。
俺は何も言ってないのに!
ドッと冷汗を流した俺に対し、「僕はあまり公開プレイを望む方ではないが」そこまで言われたら、なあ? と王子が人の腰に腕を回してきた。
「ちょっ」何をする気だとあせる俺に、「大丈夫」すぐ終わるからと御堂先輩が笑みを浮かべた。が、目が笑っていない。
目がちっとっ、うわ、耳食まないで!
嫌ですって。
こんなところでっ、しかも友達の前でっ、うぎゃぁああああああ!
(※暫くお待ち下さい)
「僕としたことが、ついムキになってしまった。しかし可愛かったぞ、豊福」
くしゃくしゃっと髪を撫ぜられる。
この行為以前にボッサボサだった髪は、これによって更にボサボサになってしまう。
いや、そんなこたぁどうでもいい。
髪なんてどうでもいい。
今の俺の気持ちはひとつ、羞恥のあまりに死にたい。
それの一点張りだ。
ずるっと腕までおりたブレザーを引き戻し、半泣きになりながらカッターシャツのボタンを留める。
「イチゴ」「翼くん」ジトーッとフライト兄弟が元凶を白眼視。彼は彼で必死に俺に謝ってきてくれた。
「ご、ご、ごめん空。俺はほんっと好奇心のつもりだったんだ。まさかこの場で実演してくれるとは思わなくってさ。お、お前の婚約者もすっごい攻め女なんだな。……攻め女、えげつなっ」
最後が本音の、本音、だよね、イチゴくん。分かります、攻め女はえげつないです。
嗚呼、俺はどうして此処にいるの。
なんで俺、公衆の面前で攻められたの。
どんな攻められ方をしたんだっけ、ていうか、俺は友達の前で……もう駄目だ。
生きていく自信がなくなった。
男として生きていく自信がなくなった。
「おにゃのこになりたい」
オカマでもいいよ。俺は男じゃなくなったんだ。
バイバイ、男の俺。
ハロー、おにゃのこの俺。
これからはセーラー服で学校に登校するから……、嗚呼、でも今着ている制服が勿体無いから御堂先輩と同じように男装って形を取ろう。
そう、今の俺は男装しているんだ。
うふっ、おしゃまな俺ね。
顔を紅潮したままグズッと涙ぐむ俺に、「大丈夫だって!」お前は受け男なだけだ! とアジくん。
「そうだよ受け身なだけだ!」君は僕達と同性だよ、とエビくん。
「攻め女怖ぇ」やっぱ空の立ち位置には立たなくていいや、とイチゴくん。
各々励ましやら率直な感想やらを述べてくれる。ううっ、やっぱり俺、受け男無理かも。男なりたい。
俺は男になりたいよ。
受け男も何も知らなかった男に戻りたい! どっから男じゃなくなった俺?!



