ぎこちなーく視線を流せば、にこっと綻んでいる俺の婚約者が腕を組んでいる。
スマホを片手に握っている御堂先輩はメールに気付かないとはどういうことだ? とスマイル。
目で脅してくる。
俺が大慌てで御堂家から借りているスマホを取り出すと、ウゲッ、新着メールが三通も。
「す。すんません!」
ちっとも気付かなくて、すぐさま謝罪すると笑みが濃くなった。
……これはナニやら良からぬことを考えているな。
ドキドキハラハラしている俺を余所に、「おはつです」空達のオトモダチです、とイチゴくん。
眉根をつり上げてくる御堂先輩は素っ気無く挨拶を返した(ああっ、彼女は男嫌いだからなぁ)。
感じの悪い挨拶だと能天気に笑うイチゴくんは、あまり態度を気にしていないらしい。
それどころか、こいつは誰だと先輩を指差す。
雰囲気で俺達の知り合いだろ? 先輩か? と質問してきた。
すかさず答えてやる。
「紹介するよイチゴくん。今話していた、俺の婚約者。御堂玲先輩だよ」
「へえー。お前の婚約者。……はあ?! 空の婚約者?! だってこいつっ、男じゃん!」
ナニ、お前はそっちの道に走ったのかと言わんばかりの眼をイチゴくんが向けてくる。
確かに女っぽい華奢な体をしているし超美形だけど、まさかそっちに……絶句するイチゴくんに、
「ち。違うよ」
先輩は女の子だよ、と慌てて否定。
彼女の趣味は男装なんだと付け加えて説明する。
まったく信じていないイチゴくんはこれの何処が女なのだと立ち上がり、御堂先輩に歩んで彼女の体を叩いた。
うっわぁああああ!
御堂先輩のボルテージが上がっていくのが分かる! 早くイチゴを止めないと!
「ちょっ!」青褪める俺を余所に、「短髪だし」頭をパンパン。「学ランだし」肩をパンパン。
「おっぱいあるし」胸をパンパン。
「え?」胸をパンパン。
「え゛?」胸をパン…、モミモミ。
ビシっとイチゴくんが硬直する。
男だと信じて疑わなかったイチゴくんの手、手、手がぁああああ?! ちょ、どっこ触ってるの!
あろうことかイチゴくんは現実が受け入れられなかったのかその手を二、三度開閉。
なんて羨ましいんだ。
俺だってまだ女性の胸を揉んだことなんてないのっゲッホゲホ!
……なんてことをしているの、君は! セクハラだよそれ!
「お、おっぱいが」
あるんですけど……、千行の汗を流すイチゴくんにだから言ったじゃないかと俺はツッコミ、その手を放すよう指示。
電光石火の如くイチゴくんは手を引き、「や。やべ」結構でかかった。柔らかかった。ボインだった。
大きいマシュマロ……なーんてストレートすぎる感想を述べている。
「女の胸を掴んじまったっ! やっべぇどうしよう。……、でもいい夢みている気分」
どーしてそんな感想を此処で言っちゃうかな、イチゴくんよ! 気持ちは分からないでもないけどさ!
おろおろとしていると殺気を感じた。
禍々しい殺気に生唾を飲んでチラッと婚約者を一瞥。
頬を紅潮させている彼女は、青筋を立てて握り拳を作っていた。
見たまんま怒ってらっしゃる。いや激怒してらっしゃる。
「イィイチィイゴォオ! 謝れ、土下座して謝れ!」
アジくんがイチゴくんの頭を鷲掴みにすると無理やり真下にさげさせる。
俺はといえば、「ごめんなさいっす!」御堂先輩の憤りに自分がちゃんと説明しなかったのが悪かったのだと何度も謝罪。
エビくんも一緒にごめんなさいしてくれた。



