前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



ズズッとコーラをストローで飲んでいるイチゴくんに、ある程度は当たっているけど彼女じゃない、婚約者がいるんだと訂正した。

飲み音が止まる。

数秒の間を置いた後、「は?」イチゴくんが間の抜けた声を上げた。

「え?」だってお前、俺と同い年じゃん…、え、婚約者? はあ? 大パニックに陥っているイチゴくんはどういうこっちゃとカップを握りつぶす。


どういうこともそういうことも俺には婚約者がいるだって。

最近できちゃったんだって、婚約者。
 

大声では説明できないから、極力声のボリュームを小さくしてかくかくしかじか。


簡単に経緯を説明する。

フライト兄弟が知っている程度の情報を彼にも提供すると、事情を知ったイチゴくんがうはーっと声を上げた。


「劇的な恋愛じゃんかそれ。すげぇな……、なんかこれしか言えないけど。空ってさ。誘拐されたり、入院したり、婚約したり、めっちゃ忙しいよな」

「全部本意じゃないんだけど、イチゴくん」
 

「いやでもさ」なんか波乱万丈な人生だよな、とイチゴくんが感心してくる。

確かに傍から見ればそうかもしれないけど、俺自身、それまでは普通の人生を歩んでいたんだ。

俺がこんなに忙しい人生を歩み始めたのはしごく最近のこと。

鈴理先輩と関わり始めてからなんだ。


彼女との出会いが悪いなんてこれぽっちも思わないけど、鈴理先輩に出逢ったことで沢山のことが変わったのも事実。

人生ってどこで転機を迎えるか分からないよな。



「んじゃあ、空、明日にでも結婚しちまうのか?」



イチゴくんの問い掛けに、「あ。そうだな」まさかの高校生結婚か? とアジくんが便乗して質問してくる。

「あのね」俺はまだ結婚できないって。

憮然と肩を竦める。
エビくんも呆れて男は18まで結婚できないでしょうと指摘。

女は16で結婚できるけど、そう説明するとアジくんがそうだったそうだったと笑声を漏らした。


「いやさ。つい、空はもう結婚できるんじゃね? って思っちまって。立ち位置は女ポジションだし。
イチゴ、空の新しい彼女っつーか、婚約者も超攻め女なんだぜ。美人だしさ。何より、元カノの好敵手で今、取り合われている状態だという」
 

「おまっ、なんでそんなに美味しい立ち位置にいるんだよ?! 俺も立ってみてぇ!」



………。


言ったな? 言っちゃったなイチゴくん? 俺の立ち位置に立ちたいって?

よーし、君は逆セクハラされたり、押し倒されてヤーンであーれーなことをされても大丈夫なんだな?

俺や大雅先輩が精神的にダメージを負っても無事でいられると?