前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



金は天下の回りものって言いますけど、ゼンゼン庶民には回ってこないっす!
寧ろ金取られてばっかっす!

誰っすか、金は天下の回りものって言った奴!

いつまで経っても金なんてびた一文入ってこないっすよ! ドチクショウっすよっ! こっちから歩まない限り、待てど暮らせど金は気配すら感じさせないっす!
   

じゃあ宝くじを買って一攫千金を狙う?

……宝くじに当たる確率なんて千万分の1っすよっ。

庶民みーんなが当たるならまだしも千万分の1。

分かりやすく例えるならば、100kgの米の中からある1粒の米粒を探し出すようなものっす!


無理でしょ?
宝くじに薄望み懸けるなんて、無謀でしょ?!


そんな確率に頼っている暇あったら、少しでも節約に心がけた方がマシっす!
 

嗚呼、お先真っ暗なニッポン…、だけど働いてくれている夫のため、愛する子供達のためっ、美味い物は作ってやりたい。それが主婦の切なる願い。

だからタイムセールというものがあるっす。
安いものを仕入れて、美味いものを家族円満に食べる。最高じゃないっすか!

それを野蛮だのなんだの、チョー失礼っすよ!


「タイムセールに参戦いしてる殆どの方が女性。
生活を背負った女性が、揉みくちゃにされながら、けれど家庭のために頑張ってるんっすよ!

戦う女性を馬鹿にしてるんっすか!

うちの母さんがセールに参戦してくれたことで、幾たび我が家を救ったことか!」
 

「いや、馬鹿にはしては……ない。僕は女性が好きだしな」


「うそつけっす! 女性を愛してやまないお方なら、どーしてタイムセールを野蛮などと称したっすか!

ええいっ、男の俺が参戦するからっすか?
男が生活を背負ってタイムセールという名の戦場に飛び込んではいけないんっすか!

今日、このセールを逃したら俺の家は一週間もやし炒め確定なんっすからね!
ちなみに二日前まで電気、水道、ガスを止められていましたがなにか?」

 
それとも? 原始的な生活を送っているとでも仰います? 
 
眉根をつり上げて、ジトーッと彼女を見据えれば、眼光の強さもしくは剣幕に押されたのか、「野蛮は言い過ぎたかもしれないな」としどろもどろ。
 

「豊福強ぇ」傍で見ていた大雅先輩がザマァだとばかりに嘲笑。

煩いとばかりにギッと御堂先輩は彼を睨むけど、まだこっちはお話が終わってないんっすよ。

イケメン女性と視線を合わせて、俺はフンッと鼻を鳴らした。