閑話休題。
生まれてはじめてバッティングセンターに入った俺は、機械から発射されるボールを快調に打ち付けていた。
さっきも言ったとおり、基本的に体育は得意な俺だ。
走る系と球技系は大得意だから、最初こそボールのスピードについていけなくても徐々に飛距離を伸ばせるようになった。
アジくんほど上手くもなかったけどさ。
いやぁ、ただ球を打ち付けるだけなのに気持ちがスカッとする。
お金を払っているからには元を取らないとな(1ゲーム200円、だと?)。
こうして俺とアジくんが飛距離を伸ばす中、エビくんだけが空振っていた。エビくんって勉強は出来ても、運動はイマイチ。
絶対ワンテンポ遅いんだ。
ボールが通り過ぎてはバットを振るエビくんに、俺達は苦笑。苦笑。その内、呆れ顔になって溜息。
ボールをよく見ようよ、エビくん。
なんでバットを振る度に目を瞑るの。
ついにはエビくん、「バットに不具合でも?」と眼鏡のブリッジを押し、持っていたバットを観察していたという。
「笹野頑張れって。ちゃんと狙って打たないとストレス溜まるぞ」
「分かってるよ、煩いな。あーあ、あの的に当ててやりたいよ。そしたら景品がもらえるのに」
エビくんが遠い目で的を眺めている。
のほほんと聞いていた俺に衝撃が走った。
え、なに? 景品がもらえる? どゆこと?
俺の問いにエビくんが的を指差した。
「あそこに的があるでしょ」
あれに当てると、景品がもらえる仕組みになっているとエビくん。
ポイント制のところもあるらしいんだけど、この施設は当てるごとに景品がもらえるらしい。
しかも場所によってもらえる景品が変わるらしい。
それを聞いた瞬間、俺の中の何かが爆ぜた。
1ゲーム200円というお金を払っているんだ。
だったら戦利品の一つでも持って帰らないと、元が取れたとは言わない。金を払った代価は頂戴する。
じゃないと割に合わない!
父さん、母さん、俺は打つよ。
ホームラン商品を貰うために、お金を払った分まで打つよ!
狙うはホームラン!
的に当てると景品がもらえるんだぞ?
必ずゲットする!
人知れず闘争心を滾らせた俺に気付かないフライト兄弟は、能天気に会話していた。
「馬鹿だな。簡単に景品が手に入るわけないだろ? ホームランとかムリムリ。まず笹野はバットに当てないと」
「絶対このバットがおかしいんだって。僕のスウィングは完璧だったよ」
「完璧なら当たるだろ。なあ、空ー…って」



