前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



閑話休題。

生まれてはじめてバッティングセンターに入った俺は、機械から発射されるボールを快調に打ち付けていた。

さっきも言ったとおり、基本的に体育は得意な俺だ。

走る系と球技系は大得意だから、最初こそボールのスピードについていけなくても徐々に飛距離を伸ばせるようになった。

アジくんほど上手くもなかったけどさ。 


いやぁ、ただ球を打ち付けるだけなのに気持ちがスカッとする。

お金を払っているからには元を取らないとな(1ゲーム200円、だと?)。


こうして俺とアジくんが飛距離を伸ばす中、エビくんだけが空振っていた。エビくんって勉強は出来ても、運動はイマイチ。

絶対ワンテンポ遅いんだ。

ボールが通り過ぎてはバットを振るエビくんに、俺達は苦笑。苦笑。その内、呆れ顔になって溜息。

ボールをよく見ようよ、エビくん。

なんでバットを振る度に目を瞑るの。


ついにはエビくん、「バットに不具合でも?」と眼鏡のブリッジを押し、持っていたバットを観察していたという。


「笹野頑張れって。ちゃんと狙って打たないとストレス溜まるぞ」

「分かってるよ、煩いな。あーあ、あの的に当ててやりたいよ。そしたら景品がもらえるのに」


エビくんが遠い目で的を眺めている。

のほほんと聞いていた俺に衝撃が走った。


え、なに? 景品がもらえる? どゆこと?


俺の問いにエビくんが的を指差した。


「あそこに的があるでしょ」


あれに当てると、景品がもらえる仕組みになっているとエビくん。

ポイント制のところもあるらしいんだけど、この施設は当てるごとに景品がもらえるらしい。

しかも場所によってもらえる景品が変わるらしい。
 

それを聞いた瞬間、俺の中の何かが爆ぜた。
 

1ゲーム200円というお金を払っているんだ。

だったら戦利品の一つでも持って帰らないと、元が取れたとは言わない。金を払った代価は頂戴する。

じゃないと割に合わない!

父さん、母さん、俺は打つよ。
ホームラン商品を貰うために、お金を払った分まで打つよ!

狙うはホームラン!
的に当てると景品がもらえるんだぞ?


必ずゲットする!


人知れず闘争心を滾らせた俺に気付かないフライト兄弟は、能天気に会話していた。



「馬鹿だな。簡単に景品が手に入るわけないだろ? ホームランとかムリムリ。まず笹野はバットに当てないと」
 
「絶対このバットがおかしいんだって。僕のスウィングは完璧だったよ」

「完璧なら当たるだろ。なあ、空ー…って」