「アジくんが言うこともご尤もだ。メリットなんてないよねぇ、借金なんて」
湿気た空気を作りたくなくて、俺は明るくメンドクサイ関係だよね、と話に便乗する。
「俺と鈴理先輩は元カレカノ。
御堂先輩とは婚約者で、大雅先輩は俺の元カノの婚約者。
大雅先輩に他に好きな人がいて、俺と鈴理先輩もまだ吹っ切れていない。御堂先輩は俺を好きでいてくれる。
あー、俺達が吹っ切れたらもっと話はスムーズに終わるんだけどさ。人間って単純そうで複雑な生き物みたい」
女々しいってのは分かっているんだけど、いかんせん他人から強制されて別れを決めちまったもんだからどっかで踏ん切りをつけられなくて。
言い聞かせても言い聞かせても、気付けば目で追っている状況だ。
そう、気付けば彼女の靡く髪を目で追い、すれ違う鈴理先輩を見つめている。わざわざ足を止めてさ。
でも三ヵ月後、俺は足を止めなくなるだろう。
そういう覚悟は既に出来ている(けどもし足を止めてしまう状況のままだったら……、嗚呼、読めない未来)。
オブラートに包んで心境を吐くと、お前等はロミオとジュリエットか、と小さく笑われた。
ロミオとジュリエット?
ああ、ウィリアム・シェイクスピアが書いたあの悲劇の名作?
きょとん顔をする俺に想いあっても結ばれないところがロミオとジュリエットだとフライト兄弟がおどけてくる。
立ち位置的に鈴理先輩がロミオで、俺がジュリエットなんだって。
いや、攻め女と受け男だからそう呼ばれてもしゃーないけど。
「マジお前等ってそんな感じだよな。あれって最後はどうなるんだっけ? 駆け落ちハッピーエンド?」
「馬鹿だな、本多。悲劇の名作なんだから最後は二人とも死んじゃうだって。手違いによる心中っていうのかな」
「へえ、心中!」
「うん、心中。死んじゃうよ、二人とも」
「……」「……」チラッ、「……」「……」チラッ、「……」「……」チラッ、「……」「……」シーン。



