「彼女は俺にとって守りたい人だよ。あの人には救われてばかりだ」
好きかって聞かれたら友情以上恋愛未満の感情で好き、かな。
少なくとも俺はあの人に幾度も支えられ救われた(鈴理先輩にも救われたっけ。その思い出がまだ愛しく思える)。
俺も家族も守ると宣言してくれた彼女。
俺自身の心を尊重してくれる御堂先輩には感謝してもし切れない。
嗚呼、そんな彼女もまた何処かで性別に対し、劣等感を抱いている。闇を抱えている。
彼女自身の口から聞いたわけじゃないけれど、淳蔵さんのやり取りを見ていたら自然と感じ取ってしまった。傍にいたらなんとなく分かってしまった。
だから、彼女は今の俺にとって守っていきたい人。
鈴理先輩とは違った、想いを寄せる人。
―――…きっとこのまま傍に居続けたら、きっと俺はあの人のことを少しずつでも。
最後の言葉は胸に止めておき、静かに返事すると、口を揃えて複雑でメンドーな三角関係だと言われてしまった。
メンドーって言われても、仕方がないじゃないか。
こういう関係が成立しているんだから。
「まあよ」発端は向こうの婚約式だよな、あの婚約式さえなかったら複雑な関係にならなくて済んだのに、アジくんが頭の後ろで腕を組む。
「それがなくても空の家事情で……別れていたのかもしれないけど。借金なんて向こうにはメリットねぇしな」
「本多」今のはデリカシーが無いよ、エビくんが強い口調で注意を促す。「あ、ごめん」アジくんが眉を下げて謝罪した。
喧騒している廊下、俺達の間には沈黙が流れ、それが遠い音に聞こえる。
借金問題、か。
そうだよな。
仮に鈴理先輩が大雅先輩と婚約しなくとも、俺の家が借金を負ってしまったら遅かれ早かれ別れは訪れていた。
俺が鈴理先輩の親の立場だったら別れて欲しいと思うだろう。
借金を抱えた家庭の息子が娘の傍にいるだなんて、ほぼ金目当てにしか見えない。
決まっていたのかな。俺達の破局は。
今となってはどう考えても変わることのない未来だけどさ。



