はてさてダース・ベイダーならぬ御堂先輩のお電話に、「玲め」抜け目のない女だと鈴理先輩が舌を鳴らした。
隙あらば口説こうと思っていたのに。本心を零す彼女に俺は苦笑して、「新しい受け男にして下さいね」と一言。
腰を上げて空になっている弁当箱と水筒を持ち、フライト兄弟に声を掛けて退席する。あんま傍にいると親衛隊が煩そうだ。
「待ってろよ」
挑発的に物申す肉食お嬢様は俺に必ず迎えに行くからと宣言してくる。
今は友人でも必ず三ヶ月以内に、その言葉に俺は目尻を下げて返事した。
俺は御堂先輩の婚約者ですから、と。
何を言われてもきっとこれはしか返せないだろう。
思うことがあっても、俺は彼女の肩を持つ。そう決めている。
失礼しますと頭を下げ、フライト兄弟と共に学食堂を後にする。
その際、へこへこしている高間先輩に寄り道し携帯を奪うと、
「センッパイ。どんだけ俺を愛してくれてるんっすか」
帰ったら覚えといて下さいよ、そう告げて携帯を返した。
なにやら高間先輩に毒舌をつかれたような気もしたけど(しかも耳元で怒鳴られたような気もするけど)、無視だ無視。親衛隊に関わるとマジでロクなことがない。
学食堂を出ると、早速エビくんに苦笑された。
「君ってまだ竹之内先輩のこと好きだろ?」
あまりにもストレート過ぎる問い掛けに、前方を歩いていた俺は首を捻って振り返る。
眼鏡のブリッジを押し、「空くんの目」いつも彼女を追っているよ、とエビくん。
「彼女の言葉に、君はどことなく嬉しそうだったよ。隠しているみたいだったけど」
おどけられた。
自覚はないけど周囲から見たらそうなのかもな。
俺は間を置いて「さあ」と答える。
「俺のすべては御堂家のものだから」
想いがあってもそれは邪魔でしかならないと返事する。
正直に吐露したい念もどっかにあるけど、立たされている現実がストッパーになったから何も零さなかった。
「じゃあ、婚約者のことは好きなのか?
」
これまたストレートな質問。
エビくんもアジくんも容赦ないな。他人事だから簡単に聞けるんだろうけどさ。
雑踏で埋め尽くされている廊下を歩き続ける俺は、反対方向から歩いて来る生徒を避けて視線を窓に流した。
今日は快晴だな。
目に沁みるほどの青空だ。雲ひとつない。
それとも俺が雲の姿を見つけられないだけかな。
等間隔に並んでいる窓を過ぎりながら、俺は尋ねられた質問に答えた。これは正直に。



