前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



ぶーっとむすくれていると、何処からともなく頭に丸められた紙くずが投げられた。

ハテナと首を傾げる俺はなんでその紙を拾う。

中を広げてみると、殴り書きで【Nのくせにアイドルと親しくしてるんじゃねえぞ!】と脅し文句が。

しかも赤文字で……、うん、これは、あれだな。あいつ等のブーイングだな。すぐ分かっちまう。

こつんとまた紙くずが頭に投げられた。
 
一度目は誰にも気付かれなかったけど、二度目は数人の目に留まる。
 

「なんですの?」


宇津木先輩に質問されてしまい、俺はさあっと肩を竦めた。で、さり気なく紙を広げてみる。

そこには【フラれたくせになんで一緒にいるんだよ!】と罵声が。


つ、痛烈。

胸を抉る言葉だけど、フラれたというより別れたって言って欲しかったな。
  

「この!」何処からともなく聞こえて来る声とこつん、頭に当たる紙くず。

中身を開けば【Mの敵!】


「畜生!」四度目からは体を捻って、キャッチすることに成功した。

投げている犯人はやーっぱり出やがった、鈴理親衛隊。


「滅べ!」憎しみを込めて紙を投げてくるのは親衛隊副隊長の高間先輩だった。


隊員が素早くルーズリーフを破り(勿体ねぇ!)、そこに彼の気持ちを代筆して丸めると副隊長に手渡している。
 
いやぁ、今日も『I love Suzuri !!』の鉢巻が眩しいくらい痛々しいっすね。
 
紙くずをキャッチしながら俺は、「あの近所迷惑になるんで」やるなら余所でしませんか? と相手に声を掛ける。

 
「ウルサーイ!」


余裕ぶってるんじゃねえぞ、この悪霊スケコマシ! ギリギリと奥歯を噛み締め、持っていた紙を握りつぶした。


「1年C組豊福空! お前は既にアイドルの傍にいることは許されない男だ! なのに何故っ、そうやって一緒に飯をっ、めしをっ……、一々癪に障る奴だな!

こっちとらぁっアイドルから総無視されるは、詰られないは、睨んでくれないはっ。

前はしてくれたのに。ええいっ、退散! 悪霊退散!」

 
「ふ、副隊長。あまり彼を罵ると、あの方から怒られますよ」


ウルサイウルサイウルサーイ!

闘争心をむき出しにしてくる高間先輩は、「しかもアイドルッ」見た目畜生な奴と婚約しているし、なんだこの地獄図。
 
アイドルは永遠にアイドルなんだ。


なんびとも男が近寄ってはいけない、女神なんだと高間先輩は紙くずを大雅先輩にも投げ始めた。