前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―




「こんなことなら腹がはち切れても食ってしまえばよかった。お金を払ったのにお残しだなんて!」

「んー、そりゃさすがに豊福。空気を読むべきだとうちも思うよ。確かにやりたい気持ちは分からないでもないけどさ」

「空気を読んでお金が戻ってくるとでも?! だったら俺はKYになってでも詰めてもらうっすよ! 嗚呼……、お金持ちさんの価値観が俺には分からないっす」


昨日だって紅茶のティーパックを使用してすぐ捨てたんですよ?

なんで一回使用しただけで捨てちまうんっすか?! まだ使えるじゃないっすか! 二回、三回使ってもまだお味ありますよっ!


うわぁああ、勿体無さ過ぎて胃がキリキリしてしまったっす!

 
俺には分からない、お金持ちさんのすること。

俺には分からないことだらけっす。

俺の常識がおかしいんっすかねっ……、間違っているんっすかね……、いやでも勿体無い。

 
嗚呼、勿体無い。
お料理にティーパック、その他諸々でも勿体無い精神が働くんっすけど省略させてもらいますっす。

小さな溜息をついていると、川島先輩からもしかしてドドドケチ? と聞かれた。
 
失礼っすね。
俺はケチじゃなく(ドドドケチって……)、節約大好き人間なんっす。

それを証明してくれるのは元カノやフライト兄弟だから、俺は彼らに同意を求めた。

妙な咳払いをされ、視線を流されたのはこの直後。


「ま、まあ空は家庭に優しい奴だな。あんたのノートはいつも小さな字で埋め尽くされているし。ただ、非常に読みにくい。ノートがチラシで代用されていることも多々」

「当たり前じゃないっすか。小さい方が沢山入るっすよ? 何事も詰めることが大事っす。ギリで読めるからセーフじゃないですか。それにチラシだって紙ですよ? 鈴理先輩」


「空くんの使っているシャーペン。どれも塾名や某会社名が入っているんだけど」


「俺、シャーペンなんて生まれてこの方、お店で買ったことないよエビくん。
だってシャーペンなんて駅前を歩けば、何かと資料や広告と一緒に配布されているじゃん。

五百円も出して機能付きシャーペンを買うなんて勿体無いし。要は書ければいいわけだしさ。

だから俺が文具で主に買うのはシャー芯と消しゴムなんだ」


「空、自販機の前を歩くと絶対立ち止まって小銭を探す」

「う゛ッ! アジくん。それは突っ込まないで欲しいところ。だ、だって時たま十円が落ちていたりすることが……、あ、あったりするじゃん。それがギザ十だと尚嬉しくない?!」

 
「あんた。やっぱケチだわ、豊福」


なんでっすかー!
 
声を張る俺に、「同じ庶民でも」そこまでしないと川島先輩。
 

そんなことないっすよ、する人はすると思います。

なにより俺は家庭に優しい男じゃないっすか。

何故にケチと呼ばれるんっすかね?!
確かに両親には少しばかり注意されることもあるけれど、一円たりとも甘く見ちゃならんと思うのですよ。

特に不景気な世の中っすから、一円だって大事にしないと。