前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



「思うでしょ!」「やっばいそれ!」話しているうちに大興奮してしまった俺と川島先輩はやばいを連呼。


なにがやばいのか分かっていない生粋の財閥組はきょとん顔を作っているけど、庶民出の俺達は住む世界が違うと口を揃えた。


更に俺は財閥会合で聞いた金持ち達の会話、休みの日にはゴルフを楽しむだの、ポルシェを買ってもらっただの、別荘でお茶会だのを川島先輩やフライト兄弟に話す。

そしたら皆でやばいと声を上げた。

 
やっぱり思うよな!
この感覚は俺がおかしいわけじゃないんだよな!
 
 
「この前、両家族揃って食事会の時があったんっすけど、そこでも衝撃を受けたんですよ」

 
源二さんの提案で先週の日曜に食事会が催された。
 
それはそれは和気藹々とした食事会で、向こうのご家族がお気に召している料亭で楽しい時間を過ごした。

 
……ちょいちょい困ったやり取りもあったけれど。

例えば御堂先輩の身なりを見た父さんと母さんが目を削いでいたこととか。
 
男装する先輩の姿を初めて見たせいだろう。

その姿で先輩が俺にちょっかいを出してきたもんだから、「お嬢さんはカッコイイ方ですね」と戸惑いの父さん。

「仲の良い男の子のスキンシップに見えますね」と苦笑の母さん、各々複雑そうに感想を漏らしていたという。


また、うちの両親と御堂夫妻が俺達の仲の良好さを語っていた時のこと。
 

息子が迷惑を掛けていないか? と父さんが話を切り出し、源二さんが出来た息子さんですよ、と褒めて話題を盛り上げる。


その内、娘を豊福家に泊まらせますので、どうぞ面倒を看てやって下さいと豪快に笑声を零していた。


双方、熱燗を飲んでほろ酔い状態だったからだろう。

母さん、一子さんを巻き込んで饒舌だったんだけど……、御堂夫妻がちょっち良好さを過度に言い過ぎた。
 

「あの仲の良さなら、空くんが18になったその日に挙式をあげられますね。貴方様」

「それどころか、先に子を授かってしまうかもしれないな」


ひっじょうに気まずくなったのは豊福家側である。


「まだ早いのでは?」おずおず父さんが物申しても、「いえいえ」財閥界では普通ですよ、と源二さん。

世継ぎが生まれたら御堂家は安泰ですよ、なんぞとご機嫌に述べていた。


後でこっそりと父さん、母さんに、焦らなくていい。自分のペースでいきなさいと諭されてしまったという……。


いやはや庶民と財閥の価値観はここから違ってくるらしい。恐れ入ったよ。
 
 
けれど一番の衝撃だったのは料理が余った時の対処だった。
 
俺は当然タッパーに詰めるものと思っていた。

料理が余ったら包んで持って帰る。

これが我が家の鉄則である。


だから詰めようと母さんにタッパーは持参したかと聞いたら、「空。恥ずかしいだろ!」「ここは料亭ですよ!」両親からダブルで注意。


え、普通は持って帰るもんじゃないのだろうか? 母さん達だってこっそり持って帰るじゃないか! 反論したらもっと注意されてしまったという。


両親曰く、場の空気を読め、だったらしいけれど俺は最後まで納得ができなかった。


お金を払って料理を食べているのだから、お持ち帰りは自由じゃないか!
 
未練たらたらに何度もタッパーを呟いていたら、「家庭的ですな」源二さんが苦笑いしていた。

さすがの御堂先輩も苦笑いだったという……、イミフだ。

持って帰ってもいいじゃんかよ。あれを持って帰って自宅で食べる。至福じゃんか! 金持ちさんは違うのか?!


うちの両親は「大変ケチな子でして」ここらへんのマナーがなっていないので申し訳ないと、何度も頭を下げていたという。
 
嗚呼、あの時の余った料理は結局どうなったんだろう?