大雅先輩は早く勝負を終えたい。終わらせたい。勝ちたい。勝たないと俺は男をやめてオカマになる、なーんて俺の台詞をパクッて嘆いている。
それに関しては何も言わなかったし言えなかった。
当事者であり、部外者の俺には発言権なんてないんだから。
思うことはあるし、正直セクハラされていても傍にいられる大雅先輩には羨望を抱くこともあるけど、今の俺には何も。
何処吹く風で聞き流していると、「突然だが」あたしの萌え話を聞いてもらいたい、鈴理先輩が真顔を作って俺達の顔を一人ひとり見渡した。
「これはあたしの友人の話になるんだが。あたしの友人は非常に耳が弱くてな」
……耳。
「そこを食めば必ず驚くのだが、ある日、あたしがその耳に両手を押し当てたことがあった。ジュースを持った後で冷えていたからな、驚かそうと思ったんだ。
そしたらどうだ? 友人はその両手を捕まえてきた」
………。
「おや? 驚かなかった。失敗したのか? と思っていると、友人は見上げて『気持ちいいっす』と言ってきた。上目遣いプラスの破廉恥な台詞に萌えてしまった! あれは狙っていたのだろうか? それとも天然なんだろうか? どう思う?」
にやっと悪意ある表情が俺の方に飛んできた。
平常心を保ちたかったけど、身に覚えのある思い出と特徴ある口調に俺は羞恥で身悶えてしまう。
お、おぉおお俺はそんなつもりで言ったんじゃないっすよ。ほんとっすよ。
あれは一種の健全スキンシップで会話することじゃないっすか。
なんで此処で言っちゃうんっすか。酷いっす、酷いっすよ!
「へえ。その友人。エロイな」
さっきの仕返しなのか、大雅先輩がしたり顔でこっちを見てきた。
あくまで鈴理先輩のフィルターのせいっすからね。俺は健全に接していましたから! もう、過去のことっすけど。
「ねえ、豊福。あんたんところはどうなの? あのイケメン彼女と婚約したらしいけど」
今の話題に飽きたのか、川島先輩が新たな話題を飛ばし、好奇心を含んだ眼を向けてくる。
「どうと言われましても」戸惑う俺に、「同棲しているんだって?」肘で小突いて揶揄してきた。
何処まで彼女は俺の家事情を知っているのだろうか?
鈴理先輩が一友人に話している可能性もあるけれど、きっと川島先輩はそれを表に出さないだろうな。それが大人の対応だろうし。
同棲ではなく御堂家に居候をしていると訂正する。
具体的にどんな生活を送っているのかと尋ねられたため、勉強ばかりしていると答えた。
もっと面白い話題は無いのかと聞かれたため、頬を掻いて思い出のページを捲る。
プライベートのことを下手に喋って御堂家に迷惑がかかったらヤなんだよな。
先輩たちが迷惑を掛けるとは思わないけど、気持ち的に喋りたくない。
「正直、お金持ちと庶民の生活の違いに困惑しっぱなしっす」
考えた挙句、当たり障りのない俺の身の上話を切り出すことにした。
「例えば?」川島先輩の疑問に、「聞いてくださいよ」金持ちの家にはですね、車庫が複数あるんっすよ。俺は彼女にありえないでしょ? と同意を求める。
「俺が把握しているだけで御堂先輩の家に車庫が三つ。各々車が三台とまっているんっすよ!」
「はあ?! じゃあ九台は普通にあるわけ? ありえないんだけど! 車検とかやばくない?」
「氷はすべて天然水で作っているそうなんっすよ」
「水道水じゃ駄目なの?! 氷、全部食えって言っているようなもんじゃんか!」
「常にエアコンを点けて空気調節をしています。しかも全部屋対象っす」
「で、電気代パないじゃん!」



