「なんというか、幸せとは無縁な面をしている。フン、一生働き蟻でいそうな男だな」
は、働き蟻とかっ!
それだけ俺がちっぽけだとでも言いたいんっすか?!
幸せとは無縁っ、それは否定できたとしても働き蟻…っ、ああああっ、否定できない俺がいるっ!
そ、そりゃあ、我が家は貧乏だけどっ、それなりに借金もある家だけど、でもでもでもニッポンって国は借金大国だから国民は皆、平等に借金を持っているのであってっ。
つまり皆、働き蟻のように働かなくてはならないんっすよ!
したがって俺だけが働き蟻じゃないわけでっ、チックショウ、なんだこのモヤっとした悔しさ!
初対面でよくもまあ人のことを働き蟻とっ…、じゃあなんっすか、貴方様は女王蟻っすか?
だったら大層な身分っすねぇ。
心中で毒吐きながらも、表では「そ、そうっすか?」と右から左に受け流す。
食らいついたら最後な気がするからな。
「って、豊福。あんた時間、大丈夫なの? そろそろじゃない?」
俺を助けてくれたのは川島先輩。
ハタッと気付いた俺は、急いで時間を尋ねる。
タイムセール五分前だと教えてもらい、俺は慌てふためいた。
た、た、大変だっ、早くスーパーに行かないとセールが始まる! 始まっちまうっ!
我が家の一週間が掛かってるんだっ、逃したらマジでもやし炒め一週間っ、んなの地獄だ!
「セール?」
なんの話だと御堂先輩は首を傾げる。
すぐにでも会場に行くのではないのか、素朴な質問に鈴理先輩が事情を説明し始める。
一分一秒でも早く行きたい俺だけど、先輩方を置いて行くのも失礼だと思うんで、その場で足踏み。
彼女の説明が終わるのを今か今かと待ちわびる。



