前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―




ご自分がなにをしたのか、よく現実を見てください。
 

好きな人を自分の気持ちとは関係なく奪われた瞬間、心構えなしに恋人と別れた瞬間、理解者を失ったその瞬間、鈴理さんは幸せそうでしたか?


私には絶望の淵に落とされた妹の哀れな姿しか目にしていません。

幸せどころか心に深い傷を作っただけですよ。


友人として側にいて欲しい。
空さまにそう頼んだそうですが、鈴理さんは彼と友人ではなく、恋人でありたかった。

いえ、現在進行形です。あの子の恋の魔法は解けていない。
 
 
何より、鈴理さんのことを空さまは理解していました。
 
あの子の寂しさを分かってくれる人だったからこそ、鈴理さんは好きだったんだと思いますよ。

空さまに出逢って、やっと鈴理さんは笑ってくれました。

あの子が久しく私達に声を掛け、恋愛話をしてきてくれた時の嬉しさッ、お父様達には分からないでしょうね。


誰より仲が良かった鈴理さんと、昔のように和気藹々とおしゃべりできた時間は何よりも輝きに満ちた宝石でした。

令嬢として気品があると周囲から褒められるより、あの子やお姉さま達と四人で隔たりなく時間を過ごした方がわたくしにとって嬉しい。
  

……お二人がっ、あの子の笑顔を奪ったんです。

お二人が私達の仲を裂いたんですっ。

 
どうしてそれを分かってくださらないんですか。

何故、鈴理の気持ちを簡単に“甘すぎる”などと言えるのですか。
どうしてあの子の気持ちと向き合ってくれないんですか、あの子は財閥を見定めたわけじゃない。


結婚とは別のやり方で存続させようと申し出ているのに、耳さえ傾けない。

この期に及んで面目を気にする心理が私には分かりません。
 
こんなことなら私も鈴理と同じように型破りな性格が良かった。一般の家庭に生まれたかった。

私達は財閥の糧じゃないんです。財閥の娘なんてっ、不幸せ極まりないです。

 

「財閥の娘じゃなかったら四姉妹っ…、いつまでも仲良くいられたのに」



堰切ったように自分の感情を吐き出した真衣は、逃げ出すように腰を上げて書斎から出て行ってしまった。