「今晩にでも抱きたいな」
感じる君を見たい、妖艶に笑う御堂先輩に血の気を引かせてしまう。
この人ならやりかねない。目がマジだよ。
ニッコリ笑顔を作る彼女に駄目だと必死にかぶりを振る。
「なら三ヵ月後に先延ばしをしてもいいよ」
それなら文句も無いだろう?
選択肢は今晩か、三ヶ月後か、この二つだけらしい。こんの悪魔は最初からこれを狙っていたに違いない!
勿論、どっちも嫌に決まっている。
青い過ちは犯したくないし、この歳で子持ちにでもなったら……嗚呼、お先真っ暗な未来だ。
仮に子供ができたら若い父ちゃんでごめんよ、な気分になる。
「どうする?」
僕が今晩でもいいんだよ?
目と鼻の先の距離まで詰め二者択一を迫る攻め女に、「三ヵ月後がいいです!」半泣きでお返事。
「そう?」今晩でもいいよ? 意地悪い笑みを浮かべて額と頬にキスをしてくる婚約者はいつだって抱けると物騒なことを仰る。
無茶苦茶だ。
俺はいつだって逃げたい人間なのに!
嗚呼、不本意ながらも鈴理先輩達を応援したくなったよ。
彼女達の婚約が白紙になれば大雅先輩の受け男危機は回避。俺も貞操の危機回避だろうし!
何度も首を横に振って三ヶ月後がいいと主張すると、「忘れないでね」今日から三ヵ月後だよ。ちゅっと鼻先にキスをして御堂先輩が受け入れてくれた。
これによって今晩の危機は回避された、が、三ヵ月後のその日はきっと……、想像するだけでもおそろしい。
唸り声を上げ、眉根を寄せていると首筋を舐められた。
「ひっ!」間の抜けた声を上げ、何をするのだと赤面する俺に、「身体検査」彼女は悍ましい四字熟語を放ってきた。
「僕の婚約者でありながら、あの鈴理に押し倒されていたんだ。それはそれは、それなりに僕も気にしているわけで?」
「え゛?」
「豊福、何をされたか洗いざらい白状してもらうよ。そういえば腕を噛まれていたね。痕になっていないか診てあげる」
「いやその」
「幸いにも蘭子は空気を読んでくれている。大いに検査ができるな? とーよーふーく」
ニッコリと笑顔を作る皮下ではきっと怒が渦巻いているに違いない。王子様の目が笑っていないのだから!
「お、俺。被害者なんですけど」怯えに怯えきっている俺に、「うん。知っている」だから心配したんだよ。体に異常がないかチェックしないとね。
御堂先輩がふふっと笑声を漏らした。
地を這うような笑みが恐怖を駆り立ててくる。
伸びてきた手に声にならない悲鳴を上げ、次の瞬間、
暗 転 。



