お触りお触りしてくるあたし様の手を必死に掴んで止めていると、「鈴理ー?」大雅先輩がひょっこりと教室に顔を出してきた。
やっべ、この状況! 傍から見れば浮気に見られるよな!
「あのっ、大雅先輩ッ! これはその」
「あー、もう豊福を襲ってんのか? テメェは我慢ってのを知らないのかよ。どんだけ欲求不満だったんだ?」
「仕方が無いではないか。禁欲を強いられて早幾月経ったと思う? もう限界も限界だ!」
ねえ、なんで二人は能天気に会話してくれているの?
わっけ分かんないよ俺。
泣きたくなってきたよ!
もう俺の頼みの綱はフライト兄弟しかない。
助けて助けてSOS!
信号を送れど、二人の首は横に振られるばかり。助けたいけど助ける術を見出せないらしい。
俺だって合気道を習っているお嬢様に勝てる気がしない。
どうしてこんなことになった、心中で涙ぐんでいると大雅先輩がスマホを取り出した。
親指で操作して電話を掛ける。
テレビ電話にしているらしく、「よっ」俺だよ俺、と画面に向かって手を振っていた。
何の用だと不機嫌に返ってくる声音にギクリと肩を震わせる。この声はもしかしなくとも。
『大雅。僕は今から部活なんだ。君と違って多忙な身の上でね』
嗚呼、やっぱり。
嫌味を飛ばされてもなんのその。
大雅先輩は大袈裟に溜息をついて、
「俺は親切心から連絡を寄こしてやったんだぞ?」
でもお前がそれならしゃーないよな。
べっつに俺は切ってもいいぜ? ヤーレヤレと言ってスマホの画面をこっちに向けた。
刹那、「センパイィイィイイ!」俺は婚約者に全力でSOSを出す。
驚愕しているのは御堂先輩。
あ、学校にいるのかな。
制服が学ランじゃなくてセーラー服にっ、じゃなくって!
「御堂先輩っ、助けて下さい! あたし様がいきなり襲ってきたんっすよ! このままじゃ食われちまいますぅうう!」
「こら空。今はあたしとお楽しみ中だ。こっちを向く」
両手で無理やり首を捻られた。
にっこりと笑ってくる悪魔は「さあて何処から頂こうかな」なにせ空の性感帯は複数あるしな。
耳にしようか、
その中にしようか、耳殻を丹念に舐めるもよし。
おっと耳たぶも美味そうだ。
唇も良かろう。
臍を舐めてやるのも悪くは無い。
それとも未開発地に触れてみるか。
物騒なことを仰る鈴理先輩に青褪めてしまう。
目っ……、目が本気だ。イッちゃってる。
「ふっ、ふふふっ、禁欲を強いられた分、鳴せるから覚悟しろ。そこにいる連中は置物とでも思っておけばいい。人の目も時に快楽となるものだ」
俗にいう公開プレイだ。嬉しいだろ?
にっこりからニンマリに笑い方を変えてくる鈴理先輩は両手を合わせてイタダキマス。
意気揚々と俺のボタンに手を掛けた。
「エッチっす!」死守する俺に、「褒め言葉として受け取っておこう」あたし様が口角をクイッとつり上げる。
はてさてこのまま流されてしまうのかと思いきや、そうは問屋が卸さない。
『鈴理―――!』
大雅先輩の持っている機具から怒声が上がった。
『君は何をしている!』
婚約者がいながら、僕の婚約者に手を出すなんて!
ギリリと奥歯を噛み締める王子に対し、鈴理先輩は疎ましそうに顔を上げた。



