「俺……、貴方の傍にいると幸せだと思えるんっす。毎日が本当に楽しい」
 

 
確かに俺はまだ、彼女の抱く好きと同じ気持ちにまでは至っていないけれど、でもこんなにも側にいてくれる御堂先輩への気持ちは変化しつつある。

彼女のことを少しずつだけど見よう見ようと思う俺がいるのだから。
 
 
「貴方は俺にとって守りたい人。友人だけじゃ、もう感情の整理がつかない」
  

家のこととは関係なしに、きっと守りたいと思う女性なんだ。
 
無視することのできない域で意識してしまっていると赤裸々に告白して瞼を持ち上げる。

相手を見やった刹那、御堂先輩の紅潮した顔がそこにあって驚いた。彼女もこんな風に照れるんだな。

はにかみを見せる御堂先輩は、「じゃあもう一歩踏み込むよ」本当はね、すぐにでも自分の物にしてしまいたいんだ。そっと歩み、俺の前に立つときつく抱擁してくる。


「立場は僕のもの、後は心だけ」
 

手を伸ばし、俺も彼女の華奢な背に腕を回した。
 
名を呼ばれて顔を上げると、噛み付くような口づけをされる。目を瞠ってしまうけど、俺はすぐに目を細め、瞳を瞼の裏に隠して行為を受け入れようと思った。


もう一方的じゃない。

彼女が俺を特別視してくれているように、俺もまたこの人を特別視している。
 
 
だって彼女は俺の婚約者、俺は彼女の婚約者。

そう、いつか俺達は夫婦になる。これは確立された未来。拒む理由はない。


触れるだけの口付けを交わし合い、間際、もっと欲しいとおねだりしてくる彼女。

返事を待たず、角度を変えてきた。並行して重ねてくる手。
骨張った綺麗な指が俺の指を絡めとる。

俺もまた、指を絡めて相手にこの行為は一方通行なものではないと教えた。



少しずつでも、受け入れていこう。


貴方の好意、行為、こういを受け入れて、いつか、俺も同じ気持ちに立てればいい。

夫婦になるその時までに、彼女が伝えてくれる好意を俺も抱けているといい。

少なくとも、俺は彼女に対して徐々に一端の女性を想う気持ちが芽生え始めているのだから。