……会話だけで察して欲しい。厨房の慌しい光景を。
結局、俺一人で作る羽目になりましたとも。
二人と一緒に作りたいのは山々だったけど、それはまた今度の機会にしないと骨を折りそう。
ただでさえ夜分遅いんだ。
俺一人で作った方がはやい。
俺が玉子焼きを作っている間、さと子ちゃんと御堂先輩はスツールに腰を掛けて会話を広げていた。
最初こそ人見知りをしていたさと子ちゃんだけど、俺が御堂先輩に上京のことや劇団のことを教えるとすぐさま彼女は話題に食らいついたんだ。
御堂先輩がお芝居スキーにホッとしたのか、さと子ちゃんもすぐに打ち解けて口を開いてくれた。
今では笑顔を零して御堂先輩と舞台の話をしている。二人の空気はすっかり友人だ。
(良かった。仲良くなれたみたいだな)
こっそりと笑みを浮かべ、「さあ出来ましたよ」三人で食べましょう。出来上がった甘い玉子焼きを皿にのせ、二人の下に運んだ。
三人分の玉子焼きは通常より、やや大きめ。
けれど三人で食べるには丁度良い大きさだろう。
特に三人が三人とも空腹なんだ。
あっという間に平らげることは目に見えていた。
甘い玉子焼きは女子組には大好評で、「美味いじゃないか」「ふわふわです」俺の料理の腕を褒めてくれる。
ただの玉子焼きだけど、こんなにも喜んでもらえると俺も嬉しい。
世辞であろうと小躍りしたくなる。
空腹が調味料になったのだと照れつつもご機嫌に自分の手料理を頬張る。
いつも以上に美味く感じるのは二人が褒めてくれたおかげだろう。
「豊福の玉子焼きは本当にクセになりそうだ。今度お弁当を作ってくれ」
「煽てても何も出ないっすよ。でも、お弁当は作ってあげますよ」
玉子焼きを夜食に厨房の隅で和気藹々と会話していると、すっかり打ち解けてくれたさと子ちゃんがふと俺達を交互に見やって意味深に笑ってくる。
笑みの意図が読めなかったから、どうしたのだと率直に聞く。
「お似合いだと思いまして」
二人が並んでいると若い夫婦みたいだとおどけた。
赤面する俺の隣で、「いずれそうなるんだ」今から照れていてどうする? と、ニタニタ笑う王子が肘で小突いてくる。



