結局、大雅先輩と鈴理先輩の喧嘩、また親衛隊や御堂先輩の乱入でまともに話すことができずに昼休みが終わってしまった。
覚悟を決めていただけに拍子抜けだ。
しかしこれで終わる筈もなく、リベンジとばかりに彼等は放課後に俺の下にやって来た。
大雅先輩は俺の裏切りの真実を、鈴理先輩は純粋に俺の心意を知りたいようだ。
それだけ俺はこの人達と密接していたのだと気付かされる。
けれど誰に真実を明かしたところで生まれるのは同情だけ。
なら、このままでいいと思った。
険悪になろうがなんだろうが、このままでいい。
淳蔵さんと対面して改めて思ったんだ。
自分が借金の肩代わりにいる人間だってことを。
御堂家は俺にとても良くしてくれるけれど、やっぱり俺は借金持ちの息子。確かな身分があることを忘れてはいけないと思った。
その想いが俺の口をかたくした。
靴を履き替えて正門を潜る間も、大雅先輩が積極的に声を掛けてくる。
ほぼ喧嘩腰だ。
口を閉ざしている俺の態度に大層煮えているらしい。
それだけ鈴理先輩を想っているのだろう。
恋心はなくとも、幼馴染として想っている。嬉しい限りだ。この人になら安心して彼女を任せられる。
鈴理先輩に声を掛けられたけれど、俺の心は彼女にすら反応を示さない。否、示さないよう蓋をしている。切ない声を出されても、俺は顧みることができないんだ。
学校の敷地を出る。
迎えの車はまだ来ていないようだ。蘭子さんのことだから、断りを入れても迎えを寄こすだろう。
さてどうしようか。
最近御堂家にスマホを貰ったから連絡してみてもいいけれど、と、思ったそばから着信だ。
スマホからでなく、それは鈴理先輩から借りた従来の携帯からだ。
早く返さないと、その思いを片隅に抱きつつディスプレイを確認。数字が羅列されていた。
あれ、この番号は確か母さんのパート先?
「やっと足を止めたな豊福っ。テメェ、さっさと事情とやらを吐きやがれ! 俺は蛇のようにしつこく聞くぞ!」
「た、大雅。もう少し穏便に聞け。あたしは平気だから」
「いいや。俺は一度こいつに鈴理を任せたんだ。婚約のことは俺達のせいだが、それでも鈴理の気持ちを傷付けるようなことだけは許せね……、豊福?」
機具越しに伝えられた内容に足元がぐらつく。
危うく崩れそうになったけど、どうにか足を踏ん張って体勢を持ち堪える。
大きな動揺と混乱が襲った。目を白黒させてその場に立ち尽くす俺に、訝しげな顔をしてどうしたと大雅先輩が肩に手を置いてくる。
その感触に我に返った俺は、弾かれたように駆け出した。



