交互に視線を流し、俺は静かに着席した。
箸を取って食べかけの弁当を手に取る。右から(伏字)の単語、左から(伏字)の単語が飛び交っているけれど、俺にそれを止める力はない。格好をつけて立ったのに……、なんだ、この羞恥心は。
二人とも、俺に用事があったんじゃないんっすか?
頭上でウフンのヤーンな単語が飛び交う中、見かねたフライト兄弟がぼそぼそっと声を掛けてきた。本当に婚約したのか、と。
小さく頷き、黙っててごめんと微苦笑を浮かべた。謝ることないと俺の気持ちを酌んでくれる二人の優しさには、ちょっぴり泣きたくなったよ。
二人の友情に味を噛み締めていると「くらぁ!」「空!」勝手に離脱するなと怒られてしまった。
り、理不尽だ。さすがにこの怒りは酷い。放置プレイされたのは俺なのに。
「あのー、すみません」
話の途中でしょうけどちょっといいですか、他者から横槍を入れられた。
声を掛けて来たのは希少も希少、親衛隊隊長の柳先輩だった。
珍しい、俺達に声を掛けてくるなんて。
携帯を片手に教室に入ってくる彼は、「お電話なんですけど……」と、おずおず自分の携帯を差し出してくる。
彼が差し出した先には大雅先輩が。「俺?」しかもテメェ誰だよ、柳先輩を一瞥しつつ怪訝に眉根を寄せる彼は携帯を取ってもしもしと相手に呼びかける。
瞬間、
『こんの卑怯者め―――ッ!』
アウチ、携帯の向こうから大絶叫こんにちは。
声の主で誰かは分かるけど、その……、何を、
『僕のいないところで婚約者と何をしているんだ!』
何をしている、は、こっちの台詞っすよ。御堂先輩。
こめかみに手を添え、一つ溜息をついた。
貴方様は柳先輩といつから連絡を取り合う関係になったんっすか。俺を心配してくれているのは嬉しいけれど、まさか親衛隊に監視させるなんて。
状況を把握していることにビビッている大雅先輩は「ストーカーかよ」とポツリ。
『ああん?』誰がストーカーだ! 相手に聞こえたらしい。御堂先輩の喝破が俺の耳にまで届いた。地獄耳か!
『僕の愛をストーカー呼ばわりするなんていい度胸だ。いいか、僕の愛は誰にも勝る真摯なもので』
「大雅、あたしはまだ話を終えていないぞ!」
「だぁああっ、いっぺんに相手にできるか! 並べ、お前等、並べ! 鈴理、ちっと黙ってろ。玲、お前の愛の戯言に付き合う暇はねぇんだよ」
そして俺はアウト・オブ・眼中なのね。



