「もしそれが真実なら、俺はお前を確実に三発は見舞いしてやる」
平坦な声音には微かに怒気が纏っていた。
けれど、昨日のやり取りを見ている手前、あの時ほど突っ掛かってくることもない。向こうも俺達の間柄に何か遭ったことくらいは察したのだろう。
でも俺の口からは絶対に言えなかった。
もし言えば、御堂財閥の印象を悪くしかねないから。俺の背中には俺自身だけじゃなく、両親の人生も乗っかっている。ゆえに軽はずみな発言は避けたかった。
だから俺は何を聞かれても、真実を告げるつもりはない。絶対に。
「恨まれてもいい。罵られてもいい。ご都合主義と言われても構わないっす。俺は御堂先輩を選びます。あの人の傍にいたい。
……あの人のためなら、なんでもできる。鈴理先輩を傷付けることさえも」
「お前はもう鈴理のことが好きじゃないのか?」
「俺から彼女を奪った貴方がいいますか? なんて、嫌味を吐いても一緒でしょうね。俺は御堂先輩を選ぶといったでしょう?」
はっきりと物申せば、「そうか」そこまで決意が固いのか。んじゃやっぱテメェ殴るわ、大雅先輩が返事した。
それで終わるなら是非そうして欲しい。詮索されたくはない。
「どうぞ」遠慮は要らないので、と俺は笑みを返す。その際、俺は条件付けた。
「俺はいいっすけど、御堂先輩に暴言は吐かないで下さいね。誰であろうとあの人を傷付けることは、俺が許さないっす。絶対に」
一変してギッと相手を見据える。
やや怯みを見せた聞き手に、また柔和に綻んで立ち上がる。
さてと、痣ができない程度にぶっ飛ばしてくれたらいいな。
痣ができたら先輩になんて言い訳すりゃ「大雅ぁあああ!」刹那、ケタタマシイ声音が教室にエコーした。
「やっべ。もう来やがった」
一変して冷汗を流す大雅先輩を余所に、青筋を立ててずかずかと入ってくる鈴理先輩。
「よくもッ、あたしを騙したな」
二人で空のところに行こうと言ったではないか。
なのにあんたは教師を利用してあたしを職員室に向かわせた。
身に覚えのない体調不良を心配され、あたしの目は点になったぞ馬鹿。
どう相手に説明するべきか時間を要したではないか!



