「初めまして豊福くん。こうして対面するのは初めてだね。君が財閥会合に出席すると知って、少しばかり挨拶をと思ったんだ」
「初めまして淳蔵さま。豊福空です。この度は、豊福家一同がお世話になりました。心より感謝申し上げます」
深く頭を下げる俺に、「大したことはしていないさ」と淳蔵さん。
ただ御堂家に嫁ぐ以上、それなりの功績を上げてもらわないと困ると釘を刺してきた。
努力は惜しみません、返事する俺に、「君の努力値は高評価している」なんたって独学で好成績をたたき出し、あの名門校の奨学生を努めているのだから。男の実力かな。
やはり男はそうでないと、と淳蔵さん。
柔和な笑顔の裏にはあからさま男尊女卑を秘めていた。
それでも愛想笑いを浮かべるしかできない。彼の笑顔の威圧が俺を脅しているんだ。
立場上、愛想よくすることが好ましいだろうし。
「玲。お前は早く世継ぎを生むことだ。なんのために彼を婚約者にしたか、分かっているだろうな?」
ターゲットを御堂先輩に向けた。
疎ましそうに分かっていますと返事する御堂先輩だけど、その嫌悪感は隠せていない。
「相変わらずだな」
男装をしていても性別は変えられないのに、皮肉を飛ばす淳蔵さんにこれは自分の趣味だと御堂先輩が素っ気無く返す。
「趣味ではなく劣等感からだろ」
容赦ない嫌味に、また一つチッと御堂先輩が舌を鳴らした。
これだけで祖父と孫の関係の全貌が明らかになる。
「そこにいるのは大雅令息。鈴理令嬢。君達の婚約に祝いの言葉を手向けていなかったね。婚約おめでとう」
人の良さそうな笑みを向ける淳蔵さんに、二人は恐縮ですと返事していた。
すっごく偉い人なんだろうな、淳蔵さんって。俺様あたし様な二人の態度を畏まらせてしまうなんてタダモノじゃないよな。



