案の定、終わりと共に大雅先輩が腰を上げて俺達の下にやって来た。
 
 
身構える俺に対して、身支度を終えた御堂先輩は「さあ帰るか」見事に彼をスルー。俺に通学鞄を持たせて無理やり立たせてくる。

ひくりと口元を引き攣らせる俺様は俺を無視するなんていい度胸だと唸った。

それさえスルーして、「今晩の飯はなんだろうな?」ありきたりな話題を俺に振ってくる。


交互に視線を流して返事に困っていると、「くらぁ!」俺様を無視すんじゃねえ! 何故か俺の耳を引っ張ってきた。
 
 
アイデデデ! 悲鳴を上げると、ようやく御堂先輩が大雅先輩を相手にした。


「大雅、僕の彼女に何をするんだ!」


せめて彼氏と言って、先輩!


「お前が無視すっから悪いんだろうが! この俺様をシカトしやがって。いい度胸だな」
 

ガンを飛ばしてくる俺様に、君は自分の婚約者とイチャイチャすればいいじゃないかと腕を払う。

彼女は耳を擦っている俺の腕を掴み、早く帰ろうと大股で歩き出した。

大慌てで抱えていた通学鞄を肩に掛け、彼女の後ろをついて行く。前方に宇津木先輩と鈴理先輩の姿が見受けられたけれど、止まることなく脇をすり抜けた。

「本当に」蚊の鳴くような声が鼓膜を振動し、足を止めてしまう。「本当に婚約したのか?」顧みずとも分かる元カノの表情に俺は微苦笑を浮かべた。
  


「ええ、貴方が大雅先輩と婚約したように、俺も婚約しました。今は御堂先輩の物です」
 


それ以上も以下も無い。
 
これは事実であり、揺るぐことのない真実だ。
 
御堂先輩と共に廊下に出てエレベータに向かう。
 
ズンズンと歩く王子に手を引かれて後ろを歩く俺。

「おい待てこら」話は終わってねぇぞ。追い駆けてくるのはいきり立っている大雅先輩。

その後ろをオロオロと付いて来るのは宇津木先輩。

更にその後ろを鈴理先輩が。彼女は婚約者に落ち着けと促している。