前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



ドキドキハラハラと様子を見守る中、釜に水を入れた御堂先輩はちゃっちゃかとお茶の用意を進めていく。

なんともまあ、豪快なお茶の淹れ方で一つ一つの動作が大きい。茶筅で茶を立てる時の動作と音の大きさといったら……、しかも抹茶の入れる量が多かったような。

途中からもう分からんって独自の方法で茶を淹れていくし。


御堂先輩ってわりと大雑把な性格なんだろうな。プリンセスなのに。
 

暫く正座して待っていると、どんっと俺の前に茶碗が置かれる。

おずおず中を覗き込んだ俺は内心で冷汗を流した。うっわー、色が濃い。苦そう。飲めるかな、これ。

更にプリンセスは茶碗と一緒に、生菓子の載った皿を出してきた。

「先に菓子から食ってくれ」

そうした方が抹茶も美味しく感じるから、先輩に言われて俺は貸しに手を伸ばした。

本当は先に抹茶を飲みたかったんだけど。

先に苦味から味わって、後から甘味を楽しみたかった。


いやいや抹茶を危惧しているわけじゃないんだけど、さ。


花型の美味しそうな生菓子にかぶりついて咀嚼。

「美味しいっすね」

でもちょっと甘過ぎるかも。
俺の言葉に、「だろ?」だから抹茶を後で飲むんだと御堂先輩が教えてくれる。

後味をさっぱりさせるために抹茶は後から飲むんだって。

なるほど、じゃあ今度はお茶を……、あ、茶碗は回して飲むんだっけ?

確か二回まわすんだっけな。うろ覚えだけど、なるべく作法はしっかりしておきたい。
 

茶碗を回して俺は音を立てながら抹茶を飲む。
 

……うん、にっがい。すんげぇにっがい。

後味をさっぱりするどころか、口の中が苦味でいっぱいだよ。これはこれで後味を引き摺るかもしれない。

背筋を伸ばしたくなる苦さに舌が悲鳴を上げそうになった。

けれど俺も男なので決めるところは決めたい。

茶碗を口元から離すと、「さっぱりして美味いっす」と爽やかな笑顔で返した。

ちょっと不安げにこっちを見ていた御堂先輩が、にこっと笑ってくれる。


うっし、頑張った俺。

例え声に出したいくらいの苦味でも、女性が作ってくれたものだ。気持ちは受け止めないとな!
 

ズズッと抹茶を啜っていた俺は、窓から見える庭園に気付き、そっちに視線を向ける。
 

闇夜の向こうに広がる庭園はなんとも幻想的なものだった。

月光に反射している池の美しさ。

厳かな空気を醸し出している灯篭。

微かに聞こえてくるししおどしの音が風流を感じさせてくれる。


心落ち着く景色だった。


彩られている庭園は日本独自の文化を醸し出している。その中で茶を飲むってのも風情があって良い気がした。