前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



俺の隣に座って早々彼女は、「ちゃんと着れているみたいだな」と袂を引っ張って覗き込んで来る。

唐突のことに俺は硬直。

すぐに息を吹き返し、「何してるんっすか!」彼女の手を払って袂を整えた。

悪びれた様子もなくプリンセスは胡坐を掻いて、こうのたまった。

素肌で着ているかどうかチェックしたかったのだ、と。


「シャツは着ていたな。残念だよ」


阿呆なこと言わないで下さいよ。貴方様のご両親が目の前にいるのに。

ほら、今のやり取りを見てご両親が呆れ……、て、いないのはきっと御堂先輩が男嫌いを乗り越えて俺に接しているからだろう。

人間の適応能力って素晴らしいな。

夫妻にニコニコ微笑まれても戸惑わなくなった俺がいる。

心中で溜息をつく俺はいるけど。

 
全員揃ったところで俺は御堂家と夕飯を取り始める。

ご飯は凄く美味しかった。

お刺身は新鮮だったし、てんぷらはサクサクしていたし、赤味噌が使われた味噌汁もいいダシが出ていて俺の舌を楽しませてくれた。


ただ目前の夫妻がいる手前、どうしても緊張が払拭できなかった。


だって俺の前にいる夫妻が義理の両親になるんだぞ。

そりゃもうヘマしないかドキドキで胃が捩れそうだったよ。

まさかこの歳で義理の両親を持つとか夢にも思わなかったしさ。うっへー、胃が痛い。
 

緊張で胸がいっぱいになりそうだった夕飯を終えた俺は、食器を片付けようと空になった茶碗を重ねる。
 
そしたら御堂先輩にそれらはテーブルに置いておいていいんだと言われた。

召使が片付けるからと微笑を浮かべ、御堂先輩は俺の腕を取って立ち上がる。


キョトン顔を作る俺に、「少し家内を歩こう」その方が何が何処にあるのか憶えるだろ? と御堂先輩。


それもそうだ。
無知のままだったら、御堂夫妻の部屋にうっかり侵入してしまいそう。

平日は此処で過ごすんだし、部屋は把握しておきたい。


「お願いしますっす」


彼女に笑みを向けると、決まりだと御堂先輩は俺の腕を引いた。

よろめく俺のことなんておかまいなしに、さっさと俺を引き摺って両親に一言掛けると大間を退室する。


俺も失礼しますと頭を下げて、彼女の後を追った。


背後から笑声が聞こえたけど、それには気付かない振りをする。

一々反応していたら俺の身が持たないもんな。