こうして来て早々二度も災難が降りかかり、既に俺の疲労はピークに達しそうだった。
それまでお金に縁が無かったからなのか、俺がお金持ちの家に行くと大抵なにかあるようだ。
金は天下の回り物っていうけど、所詮は回り物は金持ちの間だけで順繰りしているんだろうな。
あーあー、ビンボーくんは今、とつても切ない気持ちだよ。
以後、金持ちの家に行くのが怖いんだけど。
此処で生活していく自信もなくなったんだけど。
吐息を零す俺に、「申し訳ないです」膝立ちして俺の腰に帯を巻いている博紀さんが謝罪してくる。
「さと子も頑張ってはいるんですが」
どうも抜けている子で、と苦笑。
どうやらさと子ちゃんは極度のドジっ子キャラらしく、蘭子さんもほとほと手を焼いているよう。
さっきも大失態を叱るためにさと子ちゃんを引き摺って別室に移動してしまった。
俺は破れた障子に目を向ける。
穴があいてしまった障子への応急手当は手頃な和紙だった。
和紙もそれなりにお金がかかると思うんだけど、博紀さんは惜しみなくそれで穴を塞いだ。
穴があいているせいで折角の和紙も見栄えが悪くなってしまっている。
きゅっと帯を締めた博紀さんから大目に見てやって欲しいと頭を下げられた。
「いいんっすよ」
俺は気にしていないと微苦笑を零し、自分の姿に声を上げる。
今、博紀さんから浴衣を着せてもらったんだけど、これが浴衣なんだな。
初めて浴衣なんて着たよ。
俺の寝巻きがジャージだって知った博紀さんが、此処に相応しい寝巻きを貸してくれるって言ってくれたんだ。
俺はべつに中学のジャージでも良かったんだけど、よっぽどジャージがダサかったみたい。彼が着せてくれた。
藍色の無地柄の浴衣を見下ろし、「浴衣って寝巻きなんっすね」てっきり夏祭りで着るものだと思っていたと博紀さんに言う。
「元々浴衣は日本独自の寝巻きなんですよ。今も旅館なんかで浴衣を着る風習があるでしょう? 今でこそ夏の風物になってしまいましたが。きつくないですか?」
「大丈夫です。すみません、浴衣を貸してもらっちゃって」
「沢山あるから良いんですよ」博紀さんが柔和に笑顔を作る。
次いで掛け時計に目を向けると、そろそろお食事の時間ですね、と彼が俺を誘導してくれる。



