俺は羽織っていたシャツを彼女に手渡す。
「汚名挽回のために」
頑張りますっ、と言ってくれるさと子ちゃんだけど、うーん汚名返上って言いたかったのかな? 国語が弱いのかな?
蘭子さんも溜息をついているし。
「あと汚したものはないですか? それも洗いますんで」
「え、じゃあ、スラックスもお願いしようかな。お茶がこっちにも飛んじゃって。
でもまだ履いているし、これは後で頼むことにするよ。あ、ブレザーもお願いできる?」
「お任せ下さい! スラックスは後ほどで、ブレザーとカッターシャツは今からすぐに洗ってきます」
いそいそとハンガーにかかったブレザーを取ると、さと子ちゃんが一礼して廊下に向かう。
必ず綺麗にしてくると約束してくれるさと子ちゃんに、お願いしますと手を振った直後のこと。
彼女は着物を着慣れていないのか、余所見をして俺に会釈しようとしたために足が縺れた。
「あ、」と博紀さんが顔を強張らせ、慌ててダッシュするんだけど時既に遅し。
体勢を崩さないよう障子を掴んださと子ちゃんの手が、薄い和紙を突き破った。
そりゃもうビリッとか可愛い音じゃ無かったよ。
バリバリッって音が相応しい、凄い音だった。
それだけで終わったならまだしも、事態にさと子ちゃんの気が動転。
彼女はまた転倒しそうになった。
間一髪のところで博紀さんが彼女の手首を掴んだものの、俺の持っていた制服が庭園の方に放り出され、ウアァアアア?!
お池に落ちちゃったよぉおお!
あれ明日も使うんだけど!
俺の制服ー!
あ……、洗ってはくれるだろうけど、それでもショックは計り知れない。
がーんとショックを受けている俺の隣で、「さと子!」蘭子さんの喝破が響き渡り、「ごめんなさいぃい!」さと子ちゃんの謝罪の嵐が吹き荒れた。
博紀さんが大慌てで制服を取りに行ってくれる中、俺はガックシと肩を落とした。
もうどーにでもして頂戴って気分だよ。ついてない。



