前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―


 
俺は羽織っていたシャツを彼女に手渡す。

「汚名挽回のために」

頑張りますっ、と言ってくれるさと子ちゃんだけど、うーん汚名返上って言いたかったのかな? 国語が弱いのかな?

蘭子さんも溜息をついているし。
 

「あと汚したものはないですか? それも洗いますんで」

「え、じゃあ、スラックスもお願いしようかな。お茶がこっちにも飛んじゃって。
でもまだ履いているし、これは後で頼むことにするよ。あ、ブレザーもお願いできる?」

「お任せ下さい! スラックスは後ほどで、ブレザーとカッターシャツは今からすぐに洗ってきます」

 
いそいそとハンガーにかかったブレザーを取ると、さと子ちゃんが一礼して廊下に向かう。

必ず綺麗にしてくると約束してくれるさと子ちゃんに、お願いしますと手を振った直後のこと。

彼女は着物を着慣れていないのか、余所見をして俺に会釈しようとしたために足が縺れた。


「あ、」と博紀さんが顔を強張らせ、慌ててダッシュするんだけど時既に遅し。

体勢を崩さないよう障子を掴んださと子ちゃんの手が、薄い和紙を突き破った。


そりゃもうビリッとか可愛い音じゃ無かったよ。

バリバリッって音が相応しい、凄い音だった。


それだけで終わったならまだしも、事態にさと子ちゃんの気が動転。

彼女はまた転倒しそうになった。


間一髪のところで博紀さんが彼女の手首を掴んだものの、俺の持っていた制服が庭園の方に放り出され、ウアァアアア?!

お池に落ちちゃったよぉおお!

あれ明日も使うんだけど!


俺の制服ー!
 

あ……、洗ってはくれるだろうけど、それでもショックは計り知れない。

がーんとショックを受けている俺の隣で、「さと子!」蘭子さんの喝破が響き渡り、「ごめんなさいぃい!」さと子ちゃんの謝罪の嵐が吹き荒れた。


博紀さんが大慌てで制服を取りに行ってくれる中、俺はガックシと肩を落とした。


もうどーにでもして頂戴って気分だよ。ついてない。