前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



(外見もさながら、中も立派なもんだな)


廊下を歩きながら俺は屋敷をじっくり観察した。

木造の廊下はギシギシと軋むけれどとても広い。

その廊下からは庭園が見えるんだけど、これまた凄い。


庭には庭石や草木を配し、四季折々に鑑賞できるよう景色が造ってある。

重量感ある灯篭や、池、ししおどし、向こうに見える離れは茶室のようだ。

庭園の規模だけでも我が家のアパート部屋は負けている。それだけ広い。
 

あっ気取られながら庭園を眺めていると、「申し訳ございません」蘭子さんに前触れもなしに謝罪された。

何か謝られるようなことでもしたっけ?

首を傾げる俺に対し、とある障子の前で足を止めた蘭子さんは此処が俺の部屋になるのだと先に説明し、その後、この部屋は狭いのだと眉を下げる。


「もう少し良い部屋を用意できれば良かったのですが」


急だったために用意できなかったのだと蘭子さんは頭を下げた。

とても狭い部屋なのか、御堂先輩も部屋の狭さを大層気にしていたらしい。


でも俺自身、居候になる身分だから部屋の広さなんて気にしていない。


寝るスペースさえあれば、どうにか生活していけるしさ。

気にしないで欲しいと蘭子さんに言うと、また一つ詫びて彼女が障子を開けた。


満目いっぱいに広がった部屋に早速お邪魔しま……、俺は固まってしまう。


その部屋は畳みで敷き詰められていた。

向こうの厚意なのか、真新しい机や敷布団が畳まれて積まれている。更に小さな台とこれまた小さな冷蔵庫。

あれあれ、テレビまで設置されているんだけど。

机上に見えるのはノートパソコン?


何この部屋。
立派過ぎて怖い。

此処に寝るの俺? 部屋を間違えたんじゃ。


狭いってなんだっけ?


だだっ広い部屋に呆けてしまう。


これが狭い部屋、だと?

バカヤロウのベラボウチクショウ、俺のアパート部屋こそ狭いって言うだよ。

こんな立派な部屋が狭いなんて、贅沢にもほどがあるだろ!

俺、早速金持ちとの価値観の違いに悩まされそう!


それでも蘭子さんは狭くて申し訳ないと告げ、どうぞ自分の家のように寛いで欲しいと綻んできた。