「空とは、息子とは本当の親子ではありません」



ふと父さんが口を開く。


「我々は子供に恵まれませんでした」


そして空は兄夫婦の息子であり、この子は実親を亡くしています。

私にとって甥に当たる息子を引き取って早11年経ちましたが、我々にとって空は息子以上の息子であると誇りを持っています。


今日まで愛情を持って息子を育ててきました。


空はまだ子供で未熟です。
あなた方に迷惑を掛けることも多々あるでしょう。

けれど誰より両親思いの優しい子です。

どうか、そんな空を支えてやって下さい。
 

「厚かましいでしょうが、私達の息子を。どうぞ、空をよろしくお願いします」
 

身を引いて頭を下げる父さん、倣って頭を下げる母さんに泣きたくなったのはなんでだろうな。


まるで嫁に行くような気分。ああそうか、そうだよな。

俺、婚約者であり、婿養子って形に一応なったわけだし。


借金の肩代わりに婚約なんて、なんかとんでもないドラマでも見ているようだけど、これは現実なんだよな。


「未熟ですがどうぞお願いします」


俺も頭を下げた。

もう、自分の人生うんぬんかんぬん言っている場合じゃない。


俺は家の運命を背負って婚約者になった。後には引けない。
 

頭を下げる俺達に、源二さんが熱を込めて返事した。



「あなた方のご子息は、私達が責任を持ってお預かりします。お約束します」



と。



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