「えぇえっと、そ、空さん。玲さん。ロビーで何をしているのかしら」
!!!
がっちーんと固まってしまう俺と、「あ。どうも」爽やかな笑顔で会釈する御堂先輩。
おい、嘘だろ。
まさか今のやり取りをうちの母さんに見られたってわけじゃなああっ、ああぁあああ、母さんがそこにいるっ、いちゃうよ!
一子さんもそこにいるんだけど!
今の俺の反応はエロ本を親に見つかってしまったような顔をしているっ。
エロ本なんて買ったことないけどニュアンス的にはこれが一番しっくりくるだろう!
長いすに押し倒されていた俺は絶句し、「惜しかったな」御堂先輩はあと少しで制服を交換することができたのにと指を鳴らして上体を戻した。
一方の母さんは息子が襲われているって両手で顔を隠しているし、一子さんは「玲さんがやっと男の人に」と幸せそうに綻んでいる。
どっちが正常な反応かは言わずもがなだろう。
肩で引っ掛かっていた落ちそうなブレザーがずるっと腕まで落ちた。
それを合図に俺は見る見る顔を赤くして、「さ。最悪っす!」なんてことをしてくれたんだと俺は悲鳴を上げる。
もう二度と母さんに顔向けできないっすよ!
鈴理先輩でさえ、ちゃーんと場を弁え、て、はくれなかったけど……、親にこんな姿を見られたことはなかったのにぃいい!
うわぁあああ死にたいィイイイ!
ごめんよ、こんな受け男でっ、貴方の息子はいつだって女に襲われている情けない男なんだよぉおお!
嘆いている俺にポンッと肩を叩き、御堂先輩が極上のプリセンススマイルを作ってこうのたまった。
「とてもセクシーだぞ、豊福。ご婦人達へのサービスだな」
彼女が男なら殴り飛ばしたいワンフレーズっ。
どうして神様は男女を平等に作って下さらなかったのだろうか!
頭を抱える俺をスルーする御堂先輩は戻って良さそうな雰囲気なのかと質問を母親達に飛ばす。
どうやら俺達を呼びに来たらしく、おいでおいでと手招きしてきた。
その際、母さんが恥ずかしそうに「空さん。シャツのボタンは留めて下さいね」と注意してくる。
大慌てでボタンを留める俺に、「可愛い反応だな」と御堂先輩が笑いながら頭をポンポン叩いてくる。
だ、誰のせいでこんな小っ恥ずかしい思いをっ、ああもう、消えたい。人生最大の黒歴史だこれ。



