「先輩。どさくさに紛れて人の服に手を突っ込まないで下さい」
ロビーで居た堪れない気持ちになっている俺がいるんですけど、片眉根を微動させて引き攣り笑いを浮かべる。
「おーっと」なんで僕の手が豊福のシャツの中にあるんだろう。おかしいな。
うそぶくプリンセスに俺は口角を痙攣させる。
「しかも先輩」
どさくさに紛れて膝に俺を乗せないようとしないで下さい!
こんなことされたら周囲の目が気になるでしょ!
ただでさえ今の貴方様は女の子っすよ!
めーっちゃ可愛い女の子になっているのに、俺を膝に乗せてみんしゃい。
なんって目に毒な図っ!
ワンピース姿の女性の膝の上にのる俺とかアンバランスにも程があるだろ!
俺の指摘に御堂先輩が硬直する。
突然どうしたのかなぁって思って相手を見やれば、彼女は見る見る顔を赤らめて「わ。ワンピース姿のことは忘れてくれ!」女装をしていたことを忘れていたと御堂先輩が発狂した。
いや、女装じゃなくてそれが本来の姿でしょーよ。
アータは立派な女性っす!
ってっ、ゲッ、何してるんっすか!
「なんでボタンを外してるんっすか! ちょ、やめてくださいよ!」
「豊福と僕の背丈は同じくらいだから、君の制服を着れるような気がしたんだ。さあ、その制服を僕に寄越すんだ豊福!」
「はいぃい?! じゃあ俺は下着で帰れと?!」
「そんなことはしない。僕は紳士だぞ。僕の着ていたワンピースを貸すから、安心して帰れるぞ」
なーるほど、つまり先輩は男装ができるし、俺は女装ができると。
あっはっはっは。
なんて素晴らしくもえげつない思い付きだど阿呆!
紳士なんて一ミリ単位とも思わない!
俺がワンピースを着るとか論外じゃんかっ、女装とかマジ街の連中に笑われて来いって言われているもんっす!
「さあ豊福!」「嫌っす!」「ぬーげ!」「いやーっす!」「僕の言うことが聞けないのかい?」「聞けるわけないっす! これは明日も学校で着ていくっす!」「明日の朝には返すから!」「そういう問題じゃないっす!」



