そうだよ、俺はうそつきだ。
まーた自分や周囲に嘘をついて気持ちを誤魔化している。
でもこの嘘は必然だと俺は思っていた。
なにせ、泣いても笑っても今回のケースは俺の意思を組み込むことなんてできないと思った。
婚約にはすこぶる動揺したけど、それをどうするのか決定するのは俺じゃない。
相手と両親。
うちの両親でさえ、今回は自分の気持ちを反映することは不可だろう。
借金を負う側と肩代わりした側には明らかな隔たりがある。
そしてそれは後者の方に意思決定がある。子供の俺でも分かるさ。それくらい。
あの様子からしたらきっと、俺の親は、俺の親は……。
不意にそっと両頬が包まれた。
彼女と視線を合わせると御堂先輩が額をあわせてくる。
「祖父の権力は絶対だ」
電話で何を言われたかは分からないが、父は必ず交渉を成功させるよう仕向けてくる。
あの様子じゃ、きっと豊福の御両親も承諾するだろう。
五百万を五年で返すには無理がある。不本意の婚約になると思う。
きっと君は御堂家に逆らえない身分になる。
いや既に君と家族は御堂家に逆らえない身分になっている。
「それでも」君はそのままでいればいい、心まで縛るつもりはないからと御堂先輩が額に口づけをしてきた。
「優しいっすね」どうして先輩がそんなに優しいのか、優しくなれるのか不思議なくらいだと俺は口を動かした。
「勿論下心があってだろ」
いつもの口調で抱擁してくる御堂先輩は大丈夫だと言ってくれる。
両親も俺も大丈夫、きっと守ってみせるさ。
そんな女前なことを言われて苦笑やら、安堵やら。
困ったな、ほんと俺の立場無いじゃん。攻め女って時折こんなことを言って男の立場を食っちゃうから困った存在だよな。
取り敢えず、お言葉に甘えて御堂先輩に言ってみようかな。



