俺の意見に、
「これはあのクソジジイの目論見でもあるからな」
多分、この婚約は成立するんじゃないかと御堂先輩は軽く肩を竦めた。
そういえば肩代わりをしてくれたのは御堂先輩のおじいさんでしたね。
なんで見知らぬ俺達の借金を肩代わりしてくれたんだろう。
疑問を抱いていると、「世継ぎを孕ませるためだろうな」さらっと彼女が爆弾発言を投下してくる。
ピシッと固まった俺は、「孕ませるって」まさかそのあれっすか? と引き攣り笑い。
首肯する御堂先輩は、「前にも言ったが」祖父は男を欲している。早く僕の身を固めたいんだろうと鼻を鳴らす。
「僕の男嫌いも、僕がジジイ自身を嫌っていることも知っている。
だからジジイは豊福に目をつけたんだと思う。性別に拘りはあろうと、出身に拘らない奴だから。
正直ジジイの手の平で躍らせられているようで癪だな」
「嫌なら嫌って言うべきっすよ。こっちに気を回さなくてもいいっす」
「違う。癪と言ったのは、自分の手で欲しいものを手にできないこの状況だ。誰かの手を借りて君を手に入れようとは思わなかった」
予想外の事だと御堂先輩が視線を流してくる。
その視線を受け止める俺はぎこちなく、視線を逸らして宙を見つめる。
「その気になったら」
本当に学校を辞めるつもりなんですよ、俺は思ったことを吐露した。
俺達の借金じゃないにしろ、借金を負ってしまった以上は返済していかないと。
そのために中退も仕方がないことだと思う。
なにを差し出しても、両親を路頭にだけは迷わせたくないんだ。
あの人達は俺を本当の息子のように可愛がってくれた、第二の親だから。
苦言すると、「だったら尚更婚約してしまえばいいさ」御堂先輩が一笑した。
借金を負っている俺と婚約するってことがどういうことか分かっている筈なのに、
「それが君にとって最良の道なら」
僕は無理やりにでもこっちの道に引きずり込む。彼女は雄々しくも頼もしい発言をしてくる。
「僕にとっても都合が良いといえば良いんだ。チャンスが広がるから。なによりもう、僕は君の泣き顔を見たくない」
「先輩……」
「借金を負って誰よりも不安になっているくせに、親の前では強がってばかりだな豊福。学校だって本当は辞めたくないくせに。君はやっぱりうそつきだ」
さて今度は素直にさせてやろうかな。
うんっと首を捻って考える素振りを見せる御堂先輩に俺ははじめて、笑みに泣きを含ませた。
やっぱりこの人は俺の虚勢を打ち破ってくる人だ。
ちっとも優しくないな。
目を瞑ってくれたら、俺も男として見栄を張り続けられただろうに。



