まったくもってその通りだけど一子さんが彼なら良い気がすると返事した。
「娘の態度で分かりますから」
そう付け加えて。
じゃあ、その娘さんは……、御堂先輩を見やると、彼女はただただ微笑んでくれていた。
無理やりと言っても過言じゃない婚約交渉なのに、どうして御堂先輩はそんなにも笑えるんっすか。
どうしてそんなにも笑いかけてくれるんっすか。
視線を外す俺を余所に、源二さんが両親に交渉を持ちかけてくる。
ご子息を婿養子として此方に預けてくれないだろうか。
借金のカタといえば言い方が悪い、けれど今の貴方達がこれから先の生活を維持していくにはこれが必然ではないかと問う。
「勿論、関係が上手くいくかは本人達次第です」
なので今すぐ正式な婚約式を挙げようとは思わない。
しかし、これは双方必要な契約ではないかと源二さん。
「ご苦労を息子さんに背負わせているとお思いなら、少しでも幸せな道を歩ませてやる。それもまた親の務めだと思うのです。豊福さん」
果たしてこれが俺にとっての幸せかどうかは分からない。
ただ父さん達は何か思うことがあったようだ。
少しだけ親同士で話したいからと、俺と御堂先輩に席を外してくれるよう頼んできた。
ちなみにまだ食事会の「食」もできていない。
料理は運ばれているけど、手を付けていないんだ。
よって空腹も空腹なんだけど、席を外せと言われたら腰を上げるしかない。
俺は両親にロビーにいるからと言って御堂先輩と退室した。
香りの良い廊下を過ぎてロビーまで赴いた俺は、深い溜息をついて備えてある長いすに腰掛ける。
隣に腰掛ける御堂先輩は、「着替えたいんだが」とスカートの裾を摘んで嫌悪感を見せていた。
先輩、スカート捲れそうっす。元の位置に戻してください。
心中でツッコミながら、「なんでこうなるかな」俺はぐわぁあっと背もたれに寄りかかって天井を仰ぐ。
借金問題に引き続き、婚約交渉が俺の身に襲ってくるなんて、16で婚約交渉されるなんて夢にも思わなかったよ。これは夢か?
婚約ねぇ。
他人事のように現実を見つめた俺は、「先輩どうします?」婚約しちゃいそうですよ、俺達と話題を振る。
喜ばしいことだと即答で返事してくれたために俺はガックシ肩を落とすしかない。簡単な問題じゃないでしょうよ、これ。
庶民と付き合うことになるんっすよ、先輩。
メリットどころかデメリットだらけの豊福家と親族になってもどーしょうもないと思うんっすけど。



