「単刀直入に申し上げます。玲と婚約して欲しい。それが父の望みであり、ご子息を預けるとは、そういうことです」
三拍くらい間があったと思う。
「え?」「はい?」「婚約?」
順に父さん、母さん、俺が間の抜けた声を上げる。
婚約ってあれか、鈴理先輩と大雅先輩が築き上げているような関係のことか。
つまるところ将来はいい夫婦になろうね、と約束しちまう関係に俺と御堂先輩があぁあああ?!
どっかーんと俺の脳内が爆発した。
ついでに俺の両サイドにいた父さん母さんも絶句している。
お互いの顔にはでかでかと、どの流れになったらそうなった。金持ちの思考がちっともわっかんねえ! って書いてある。
俺もまさしく同じ心境だ。
俺と婚約して何のメリットがあるんでっしゃろう!
確かに婚約しちまったら借金を踏み倒すことなんてできないだろうけど。
「父は五百万の代償を」
ご子息で相殺したいそうなんです、源二さんが意味深に言った。
シビアなことを言えば、子息との婚約が取れないならば五年以内に五百万を返済。
もしくは踏み倒した本人を連れてくるよう請求しているのだとか。
源二さんの説明に、俺はすかさず脳内計算機で家計簿と照らし合わせながら計算した。
五年以内に返済。一年は十二ヶ月だから、月に約八.五万の返済が出てくるわけか。
……むっちゃ厳しいぞ。
借金返済だけで一ヶ月の生活費が飛んじまうじゃんか。
返済とは別に家賃や水道光熱費といった支払いがある。
とてもじゃないけど生活できるレベルじゃない。
それこそ学校を辞めて働かないといけないレベルだ。
が、正社員にでもならない限り、今の生活を維持するのは難しいだろう。俺が正社員になれる可能性はきわめて低い。
今の日本は不況で就職難、氷河期に入っているんだぞ。中退者を受け入れてくれる企業が何処にあるんだよ。
どちらにせよ、このままじゃ路頭に迷ってしまう道しかない。
どーしよう、両親を路頭に迷わせたくは無いけどさ。
婚約、この歳で婚約とか考えたことも無かったよ。
うーん、借金男と令嬢が婚約。
御堂先輩が可哀想じゃないか。
もっと別の道は無いか。別の道……、あ、そうだ。



