重々しい空気を作る豊福家に、
「父の思考の全ては読めませんが」
この見合いは必然だったのかもしれませんね、と源二さんが各々視線を配った。
「もしかしたら父はご子息を我々に預けて欲しいと考えた上で、見合いを計画したのかもしれません。
私達も今日の今日まで相手すら知らされていませんでしたので、正直今日の見合いに気鬱を抱いていました。此方とて玲は大事な愛娘ですから」
「でしたら、この見合いは不成立ではないでしょうか?
身分があまりにも違いますし、息子と見合いをしたところでメリットがあるとは思えません。
息子には苦労ばかり掛けている始末です。
財力も庶民並の我々と見合いをして何の得があるでしょうか?」
父さんの台詞に、「確かに」源二さんが一つ頷いた。
「しかし」我々には大きなメリットがあるのですよ、と言葉を上塗りしてくる。
「実は私の娘は生粋の男嫌いでして。幾多に渡って見合い、許婚を白紙にしてきました。挙句、やや趣向が変わっておりまして。
簡単に言えば女の子がすきなのですよ。男になんて見向きもしなかった。
……いつか、娘が彼女を作ってくるのではないかといつもハラハラしておりまして」
「か、彼女ですか」
引き攣り笑いを浮かべる父さんの顔には、ハッキリとこう書かれている。
金持ちの思考が分からんって。
母さんも途方にくれたような顔をしているし、一子さんは娘が彼女を連れてきたビジョンを思い浮かべたのか、シクシクと着物の袖で目元を押し当てていた。
本人はといえば、「男は嫌いです」それは変えようのない事実だとそっぽ向いてしまった。
女子を口説く方が楽しいですから、と言った瞬間、どーんと向こう両親が落ち込んだ。
そりゃもう頭上に雨雲を作って落ち込んでいる。
その落ち込みようは日頃の苦労を物語っていた。
「これなんです」男にまったく興味のない子なんですよ、と一子さんがオイオイシクシク泣きべそを掻く。
「わたくしは玲の彼女ではなく、できることなら彼氏を見たいと望んでいるのです。
しかし、此方の願いも虚しくいつまで経っても玲は女性に目を向けていました。そう、ご子息が現れるまでは。
先程の玲の反応にわたくしも夫も感動したのです。
あの玲が嫌悪感なく、寧ろ好意を向けて男性を意識していたのですから!」



