「せめて空の件をどうにかしないとな。空だけを預けるなんてできない」
「そうですよ。空さんを人質に取るなら、私達全員を人質にすればいいんです」
鼻息を荒くする母さんに俺は微苦笑した。
母さん、すっかり強気だけど大丈夫かな。心配してくれるのは嬉しいけど、気持ちが空回りしそうでしそうで。
それにしても早く来ないかな。
神経が図太いのか、腹も減ってきたよ俺。
借金のことで話し合いに来たのに、生理的欲求には「嫌です!」
突然、廊下から喝破が聞こえた。
身を竦める豊福家はつい障子側を見やる。
「こんなの聞いてません!」
何故学ランじゃ駄目なんですか! という声に、「我慢しなさい」すぐ着替えられるから、と諌める女性の声。
けたたましい声と共にバタバタと足音が聞こえたと思ったら、勢い良く障子が開かれた。
現れたのはスーツ姿の中年男性と、紫の着物姿の中年女性。
「いやぁ、すみません。すっかり遅れてしまって」
ぺこぺこと頭を下げる男性に唖然、申し訳ございませんと頭を下げる女性にも唖然。
呆ける俺達を余所に、「ああ。君がお相手の」と男性が俺の方を見つめて綻んでくる。
立派なご子息さんですね、と世辞を述べてきたんだけど、えーっとなんか雰囲気が違うような。肩
代わりの人が男性で秘書が女性?
じゃあ弁護士もすぐ入ってくるのか?
なーんて思っていると、「早く入って来なさい」と女性が障子向こうにいる相手に対し呆れ顔を作った。
「まったく」男性も呆れて、俺達にすみませんとまた一つ謝罪をしてくる。
「娘はとてもシャイでして」
あれ、弁護士は娘さん?
ますます混乱する俺達の前にやーっと弁護士さんと思われる女性が入って来た、ん、だけど。



