前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



「せめて空の件をどうにかしないとな。空だけを預けるなんてできない」

「そうですよ。空さんを人質に取るなら、私達全員を人質にすればいいんです」


鼻息を荒くする母さんに俺は微苦笑した。

母さん、すっかり強気だけど大丈夫かな。心配してくれるのは嬉しいけど、気持ちが空回りしそうでしそうで。


それにしても早く来ないかな。

神経が図太いのか、腹も減ってきたよ俺。


借金のことで話し合いに来たのに、生理的欲求には「嫌です!」


突然、廊下から喝破が聞こえた。

身を竦める豊福家はつい障子側を見やる。

「こんなの聞いてません!」

何故学ランじゃ駄目なんですか! という声に、「我慢しなさい」すぐ着替えられるから、と諌める女性の声。


けたたましい声と共にバタバタと足音が聞こえたと思ったら、勢い良く障子が開かれた。

現れたのはスーツ姿の中年男性と、紫の着物姿の中年女性。



「いやぁ、すみません。すっかり遅れてしまって」
 


ぺこぺこと頭を下げる男性に唖然、申し訳ございませんと頭を下げる女性にも唖然。

呆ける俺達を余所に、「ああ。君がお相手の」と男性が俺の方を見つめて綻んでくる。

立派なご子息さんですね、と世辞を述べてきたんだけど、えーっとなんか雰囲気が違うような。肩

代わりの人が男性で秘書が女性?

じゃあ弁護士もすぐ入ってくるのか?

なーんて思っていると、「早く入って来なさい」と女性が障子向こうにいる相手に対し呆れ顔を作った。


「まったく」男性も呆れて、俺達にすみませんとまた一つ謝罪をしてくる。



「娘はとてもシャイでして」


 
あれ、弁護士は娘さん?

ますます混乱する俺達の前にやーっと弁護士さんと思われる女性が入って来た、ん、だけど。