「裕作さんっ…、条件の意図…が、見えないんです。なんで空さんを。私でもいい…、でしょうに」
グズグズ泣く母さんの問い掛けに、「分からない」父さんが苦々しい表情で答えた。
一番の手は借金を踏み倒した相手を見つけ出して差し出すことだろうと父さん。
踏み倒した相手を差し出し、連帯保証人の一件を伝えればきっと自分達に回ってきた五百万は消えてくれるに違いない。
ただ濱さんって人を探すことは不可に近いだろう。
向こう側も見つからないから返済義務をこっちに寄越してきたんだ。
俺達の手で見つけるには至難の業だろう。
ちなみに両親も借金の件は今日の昼間に知ったことらしい。
父さんの勤めている会社に封筒が送られて、その旨が綴られた内容や契約書が入っていたんだって。
血相を変えた父さんはすぐさま母さんに連絡。そして今に至るらしい。
静まり返る居間に母さんの泣声だけが満たしていく。
ちゃぶ台の上に置いているティッシュを取っては目に押し当て、鼻をかみ。取っては目に押し当て、鼻をかみ。
そうして丸まったティッシュの残骸が増えていく。
苦痛帯びた両親の顔を見たくなくて俺は言う。
俺なら大丈夫だから、それに従おうよ、と。



