呆気取られる俺の側で、
「空さんは私達の息子なんです」
肩代わりしてくれたからといって得体の知れない輩に息子を預けるなんてできっこない、母さんが半狂乱になって声音を張った。
まるで駄々を捏ねた子供のように、「息子なんですっ」まだ親元を離れるほど大人じゃないとシクシク母さんがすすり泣く。
あまりにも突然のことで俺も情報を処理できない。
端的に言えば、借金ができた。
肩代わりしてくれる人が出てきた。
でもその人は俺達を信用していない。
だから人質を取って返済義務を促す。
それが俺。
こんなもんか? 今の流れは。
……人質、俺が。
「濱さんが悪いんです。あの人の借金がこっちに回ってきてっ…、私達も…、空さんも関係ないのに」
充血し始めた目をティッシュで拭い、スンッと鼻を啜って堰切ったように母さんが涙を流す。
「母さん」俺はしきりに悔し涙を流す母親になんと言葉を掛ければいいか分からなかった。
俺自身も悔しがるべきなんだろうけど、それ以上に両親の狼狽が自分を冷静にさせる。
「大丈夫だよ」
俺ならなんとかやっていけるって、当たり障りのない気遣いを向けると母さんの涙の量が増えた。
豪雨が襲ったかのように、母さんの悔し涙が畳や服に落ちていく。
そ、そんなに泣かないでよ母さん。
俺だってどうすればいいか分からなくなるじゃないか。
そりゃ借金のことは聞いて驚いたけど、条件として俺が挙がったならそれに従わないと。
条件に従わなかったら、ただちに五百万返せって脅されるのは目に見えているだろうし。



